外膜タンパク質ポリンは、グラム陰性菌の外膜に存在するβバレル状構造のタンパク質で、細菌の生命活動に必須な基質を輸送するとともに、ヒト異物認識受容体Toll-like受容体(TLR)を介し、獲得免疫誘導にも重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本研究は生化学、構造生物学的手法を用いて、1)TLRによるポリンの認識機構、シグナル開始機構解明を目指すと同時に、2)ポリン自身の解析を進め菌体への役割の解明を目指している。 1)については、昨年度に引き続きTLR2-ポリン複合体の精製を試みた。酵母に発現させたTLRの安定性をより上げるように工夫し、昨年度と比較しより安定度の増したTLR2を用いてTLR2-ポリン複合体の単離を試みた。また得られた複合体をネガティブ染色法を用いて電子顕微鏡下で観察した。単一の状態ではなく様々な状態の分子が観察された。 2)に関しては、先行研究により髄膜炎由来のポリンPorBのあるループ変異体ではアンピシリンやテトラサイクリンへの耐性を与えることが分かっている。このポリンの野生型と変異体を構造解析を行なった。また共同研究者と共にシングルチャネルの電気生理学、輸送活性解析、分子動力学シュミレーションを行なった結果、抗生物質の輸送にも細かな基質輸送の待ち時間が存在し、また基質のタンパクへの弱い結合も存在することが明らかになってきた。さらに基質の輸送路となるCentral poreの電荷バランスが基質輸送に様々な影響を与える事により複数の状態が存在することがわかった。
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