研究課題/領域番号 |
16K18512
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹下 大二郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (80613265)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造解析 / タンパク質 / 核酸 |
研究実績の概要 |
翻訳開始因子リン酸化酵素の一つであるPKRは、ウイルス由来のRNAによって活性化され、翻訳開始因子eIF2αをリン酸化し不活性化する。eIF2α不活性化の結果、タンパク質合成は阻害され、ウイルス増殖は抑制される。これまで、PKRがどのようにウイルス由来RNAを認識するか解明されていない。そのため、本研究課題では、PKR・RNA複合体構造解析を行い、外来RNAに対する認識機構と活性化機構を明らかにすることを目的とする。 真核生物由来PKRの組換えタンパク質の調製を行った。HISタグ付加した酵素のコンストラクトを作製し、組換えタンパク質を発現した。全長、および全ドメインを含むコンストラクトを作製し、Niカラム、イオン交換カラム、ゲルろ過カラムを使って精製を行った。濃縮を行ってRNAと混合して、結晶化スクリーニング実験を行った。しかしながら現在まで、結晶を得るところまで至っていない。全長のサンプルでは、柔軟な領域があり、それが結晶化を妨げていると考えられる。また、リン酸化活性の活性部位を含む領域や、活性を阻害するウイルスタンパク質を大腸菌で大量発現し、Niカラム、陰イオン交換カラム、ゲルろ過カラムを使って精製を行った。精製した後、結晶化スクリーニング実験を行った。その結果、ウイルスタンパク質については結晶を得ることができた。今後、さらに結晶化条件などの検討を行い、良質な結晶を作製する予定である。また、酵素RNA複合体の調製条件を検討していき、結晶化実験に供していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酵素とRNAの複合体の調製が可能になっているが、結晶化に用いるタンパク質の領域の見直しやRNAの鎖長の再検討を行って、結晶化スクリーニング実験を進める必要がある。酵素とRNAの分子量が大きいため、結晶化を阻害する柔軟な領域が存在すると推測される。結晶化に用いる試料の再検討を行うことが有効な手段と考えられる。PKRを阻害するウイルス由来のタンパク質も調製を行っており、結晶を得ることに成功している。得られている結晶の構造決定を進めるとともに、ウイルスタンパク質と酵素複合体の結晶化も実施し、酵素に対する制御機構を解明していきたいと考えている。ウイルスによる制御機構が明らかとなれば、酵素の活性発現における重要な部位の特定にも繋がると期待される。そのため今後、RNA複合体、ウイルスタンパク質複合体の構造決定を同時に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
結晶化に成功しているタンパク質の構造決定を進めて行く。また、酵素RNA複合体の結晶化条件の検討を行う。結晶化に利用する酵素の領域の絞り込みや、アミノ酸変異の導入、RNAの鎖長や二次構造の検討を行って、結晶化スクリーニングを実施する。複合体調製の後、ゲルろ過クロマトグラフィーなどを行って複合体の安定性を測定し、結晶化に適する複合体の調製を目指す。結晶が得られた後、X線回折データの収集と異常分散を利用した方法あるいは分子置換法を用いた位相決定を実施し構造決定を行っていく。構造決定の後は、生化学的手法や生物物理学的手法を用いて、複合体形成による制御機構と酵素の活性化機構を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質の不安定性があるなど良質な結晶を得るまでの実験に予想以上の時間がかかり、結晶構造解析用のPCや結晶マウントツールなどの結晶化後の機器・装置の導入の必要性が低かった。結晶が得られてきているため、今年度以降、新しく構造解析用PC、結晶マウントツールを導入して、結晶構造の決定に利用する設備の充実を行っていく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
X線結晶構造解析の実施に必要なLINUXベースの構造解析用PCの導入を行う予定である。その他、X線回折データの収集に必要な結晶マウントツールなど、結晶を扱う実験機器の導入を行う予定である。
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