研究課題/領域番号 |
16K18514
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古川 健太郎 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20754493)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア / オートファジー / マイトファジー / ストレス応答キナーゼ / 酵母 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジーは、ミトコンドリアの品質管理を担う酵母からヒトまで保存された重要な生理機能である。本研究では酵母におけるマイトファジーレセプターAtg32の制御機構の解明と人工制御を目指している。栄養飢餓などのマイトファジー誘導条件において、カゼインキナーゼ2(CK2)によるAtg32のSer114/Ser119残基のリン酸化がマイトファジーの最初のステップであるが、CK2は恒常的に活性を有するキナーゼであるにもかかわらず、マイトファジー誘導時にのみAtg32がリン酸化される制御機構はこれまで全く分かっていなかった。平成28年度は、CK2によるAtg32のリン酸化を阻害する因子が存在するという仮説のもと実験を進めた。マイトファジー誘導条件下でAtg32がミトコンドリア上に集積する現象が既に分かっていた。本研究では、蛍光顕微鏡によるGFP-Atg32の局在観察を指標として、酵母の遺伝子破壊株ライブラリー(約5,100株)からマイトファジー非誘導条件下においてもGFP-Atg32の集積を引き起こす変異株(すなわちリン酸化阻害因子)をスクリーニングした。その結果、多数の変異株が取得され、その中でもAtg32の恒常的なリン酸化を引き起こす変異株(ここではsuppressor Xと呼ぶ)に着目した。Suppressor Xの破壊株において、(1)Atg32の恒常的リン酸化はCK2かつSer114/Ser119依存的であり、(2)選択的オートファジーのアダプタータンパク質であるAtg11とAtg32の飢餓に依存しない相互作用が観察され、(3)マイトファジーレベルの亢進が見られた。以上の結果から、本研究で同定したsuppressor XはAtg32のリン酸化の負の制御因子であると結論づけた。現在、suppressor Xの更なる詳細な解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画通り、Atg32のリン酸化を負に制御する因子を同定することができたため、おおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
Atg32のリン酸化抑制機構をin vitroレベルで証明する。また、Hog1、CK2、Atg32リン酸化阻害因子などの局在や結合様式を遺伝子操作によって改変し、栄養飢餓に依存しないHog1活性化シグナルを通じてマイトファジーを誘導する方法を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Atg32のリン酸化抑制因子のスクリーニング方法としてツーハイブリッド解析やプロテオミクス解析も計画していたが、GFP-Atg32の集積を指標としたスクリーニングによって目的因子を同定することに成功した。従って、平成28年度はほとんどの研究が予定以上に早く進み、計画していた予算よりも少額の研究費で成果を挙げることができた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、Atg32のリン酸化抑制機構のin vitroにおける実験のための試薬およびCK2やHog1の遺伝子改変のための遺伝子操作試薬に予算を使用する。さらに、得られた研究成果をまとめて速やかに発表を行う必要があるため、学術雑誌へ投稿するための費用(英文校正費およびオープンアクセスなどの出版費)としても使用する予定である。
|