研究課題/領域番号 |
16K18516
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂本 泰久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20613392)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / Membrane curvature / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
ユビキチン化酵素Nedd4Lはエンドサイトーシス小胞形成の際におきる細胞膜の変形(Membrane curvature)によって活性化する特異な性質をもつ。本研究ではNedd4Lのアダプター分子ARRDC1の細胞内局在、Nedd4L活性化の制御機構を明らかにすることを目的とする。 <ARRDC1の細胞膜結合機能の解析> ARRDC1と様々なリン脂質種との結合を網羅的に調べARRDC1はPS、PI(4,5)P2以外にもPI3P、PI4P、PI5P、PI(3,4,5)P3、さらにフォスファチジン酸など広範な酸性リン脂質に結合することを明らかにした。ARRDC1とリン脂質の結合を調べる過程で、我々はビオチン‐アビジン結合を利用したタンパク質‐リポソーム結合実験を行った。そしてビオチン化リン脂質のスペーサーがリポソーム―タンパク質結合実験に与える影響を評価し論文発表した(Sakamoto et al. J. Biochem. 2017)。 <細胞内局在における動態解析> 膜近傍でのARRDC1の局在、動態を明らかにするため全反射蛍光顕微鏡によってARRDC1のクラスリン被覆ピットでのダイナミクスを解析した。その結果、ARRDC1はクラスリン、FCHO2といった小胞形成に関わるタンパク質とクラスリン被覆ピットに共局在することを明らかにした。ARRDC1は半減期の長いクラスリン被覆プラークよりむしろ半減期の短いクラスリン被覆ピットにおいてクラスリン、FCHO2と共局在した。 以上の結果から、ARRDC1はNedd4Lとともに酸性リン脂質、Membrane curvatureに応答してクラスリン被覆ピットに局在化し、膜タンパク質のユビキチン化を介したエンドサイトーシスを制御すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生化学解析のためARRDC1の組換えタンパク質の精製を試みた。野生型は一定量の精製に成功した。しかし膜に結合しない点変異型ARRDC1は大腸菌、昆虫細胞、哺乳類細胞での精製を試みたが十分な量の精製ができなかった。よって点変異型ARRDC1の機能解析は細胞生物学的手法によって検証することとする。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はARRDC1によるNedd4L活性制御機構の解明を目指す。そこで、Nedd4Lの活性化におけるARRDC1、Membrane curvatureの影響を調べる。 ① 細胞内でのNedd4L活性化の評価 培養細胞にNedd4LとARRDC1を共発現させ、細胞抽出液からNedd4Lを免疫沈降法によって回収する。そしてNedd4Lの自己ユビキチン化が促進されるかをユビキチン抗体で検出し確認する。 ② 試験管内でのNedd4L活性化の評価 組み換えタンパク質を用いた試験管内実験系によってNedd4Lの自己ユビキチン化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
小額の次年度使用額が生じたがほぼ計画通りに予算執行した。
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次年度使用額の使用計画 |
計画通りに予算執行を行う。
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