研究実績の概要 |
RNA干渉 (RNAi)は、配列に応じた遺伝子抑制を担う真核生物に備わった内在的な機構であり、その発見は「10年に一度に起こる大きな科学的ブレークスルー」として受け継がれ、2006年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。RNAiにおいては、相補的な二本のRNAが対を形成して作られる二本鎖RNA (dsRNA)がその配列に対応する標的遺伝子の働きを抑制する。一般的に、二本鎖RNA (dsRNA)を含む機能性RNAは、産生された細胞自身で作用するが、中には細胞外へ放出され別の細胞で作用したり、異種生物間または同種生物間で伝播したりして作用するものもある。このように、機能性RNAが細胞外へ放出され、それを取り込む経路が存在している訳であるが、細胞外に存在している機能性RNAの状態(eg. 細胞外小胞)が多様であることから、伝播経路はいくつか存在していると考えられる。線虫C. elegansにおいては、高等生物における機能的なRNAの標的細胞への伝播と類似する現象「全身性RNAi」が知られる。上でも述べたように、機能的なRNAの細胞間伝播経路にはいくつかの経路があるが、C. elegansの「全身性RNAi」ではこれらの経路うちのいずれかの経路を介してdsRNAが細胞間を伝播していると考えられる。変異体を用いた解析などから、これまでに、「全身性RNAi」において、亜鉛輸送体などが機能的なRNAの取り込みを負に制御することを見出してきた。本研究では、亜鉛輸送を手がかりに、二本鎖RNAが細胞間伝播する分子メカニズムを明らかにしていく。これまでに、国際学会(East Asia worm meeting, FAOPS2019やEurope worm meetingなど) でポスター発表を行ってきた。East Asia worm meeting では、ポスターアワードを受賞した。
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