研究課題/領域番号 |
16K18518
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
和田 俊樹 (矢部俊樹) 金沢医科大学, 医学部, 講師 (10451634)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TLR / サイトカイン / 転写後制御 |
研究実績の概要 |
Toll-like receptor(TLR)は,病原体由来の共通パターン分子(PAMPs)を認識するパターン認識受容体として自然免疫系において重要な役割を担う.これまで,TLRによる炎症性サイトカイン遺伝子の発現機構の研究は精力的に行われてきたが,サイトカイン蛋白質の分泌制御に関しては不明な点が多く残されている.本研究では,IFN-αの細胞外への分泌を担うキャリア分子として同定したSortilinが各種サイトカインの分泌を担うサイトカインキャリアとして機能することを明らかにする. Sortilin及びサイトカイン組換蛋白質を用いたSPR解析による物理学的相互作用の解析を行った結果,NGF-bやIFN-gに加えて,IFN-aやIL-6,IL-10,IL-12及びIL-17とSortilinの結合が観察された.また,マウス骨髄から誘導した形質細胞様樹状細胞(pDC)において,SortilinとIFN-aが共局在することを間接免疫蛍光抗体法にて確認した.また,pDCを用いてSortilinのsiRNAによるノックダウンによって,pDCでのTLRシグナル依存的なIFN-aの分泌が顕著に減少した.このことから,SortilinはpDCにおいてIFN-aの細胞外への輸送に重要な役割を担っていることが示唆された.更に,Sortilin mRNAがTLRシグナル依存的に分解されることを見出した. 解析を進めた結果,ポリC結合蛋白質1(PCBP1)がSortilin mRNAの3’非翻訳領域(UTR)に結合し,Sortilin mRNAを安定化することを見出した.また,Sortilin mRNAが細胞内亜鉛濃度依存的に分解されることを見出した.以上から,PCBP1で安定化されたSortilin mRNAを分解へ導く,TLR-亜鉛シグナル依存的転写後制御機構が存在することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度はSortilinに結合するサイトカインとその機能制御機構に関して,亜鉛が関与するという新しい知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
Sortilin mRNAを転写後制御機構によって分解に導く亜鉛依存的なシグナル経路の解明を目指す.また,樹状細胞以外の細胞において,Sortilinが同様の機能を担うかどうか,Sortilinパラログが同様の機能を担うかに関しても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンス解析用の試料調製が遅れたため,次世代シーケンス解析費用として計上していた費用が未使用分として計上された.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度で計画していた次世代シーケンス解析費として計上し,その解析費用として使用する予定である.
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備考 |
報道発表 2016年5月26日(木)北國新聞朝刊 掲載 「免疫細胞の新機構解明-炎症性疾患治療に期待」
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