様々な種類のアミロイド線維に対して脱凝集活性があるとされる脱凝集酵素Hsp104が、アミロイド線維上をどのように動いて脱凝集するのか、線維の種類によってその動きは変わるか明らかにするため、組換えタンパクでHsp104とアミロイド線維を用意し、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)で観察した。しかし、脱凝集の同定には至らなかった。一方、基質用に調製したアミロイド線維の構造動態の観察、長時間温度と湿度を制御・維持可能な高速AFM用試料インキュベータの開発に成功した。 脱凝集を特定できない原因として、高速AFMカンチレバー探針の先端曲率とステージ上に固定された線維が挙げられる。脱凝集活性の一つに線維の切断が推定されるが、切断できても切断箇所を検出できない。線維を構成する単量体は0.5 nm程度の幅で線維長軸方向に重なっており、線維の途中を脱凝集すると断片化線維間に隙間ができる。切断された線維はステージ上に固定されたままなので、0.5 nm程度の隙間しかできない。この隙間に探針は入り込めないため、線維上の切断箇所を観察できない。Hsp104が線維上を滑走運動することも考えられる。このとき、線維のらせん軸を中心にHsp104が回転する必要があるが、線維がステージ上に固定して密着しているので、回転できない。 以上の結論に至る試行錯誤の中で、温度・湿度を長時間制御可能な高速AFM用インキュベータの開発、アミロイド線維形成に関する新知見の発見に成功した。Hsp104の活性は温度依存性が高く、長時間を要する。高速AFM試料を閉鎖系にし、温調と水槽を設置することで達成した。また、複数の構造の異なる線維を調製する中で、線維の自己依存的複製反応について、線維に取り込まれる側の単量体の構造が関与することを発見した。
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