Mg2+はCa2+濃度を制御しており、これらの濃度変化は血管の収縮や弛緩、種々の病態にも関与している。これまでCa2+の動態が明らかになってきた一方で、Mg2+の動態の理解は最適なプローブがないためCa2+に比べ大きく遅れをとっている。そこで蛍光小分子化合物プローブでは難しい個体間の比較や細胞形態が変化する状況での観察や、蛍光タンパク質が持つ励起光による細胞毒性や自家蛍光などの問題解決に向けて発光タンパク質を用いたMg2+プローブを開発することにした。 まず初めにトゲオキヒオドシエビルシフェラーゼ(Nluc)内の様々な位置にヒトセントリンのアイソフォーム(HsCen3)、原核生物Mg2+トランスポーターCorA、 またはその変異体を導入したインテンシオメトリック型のプローブを作成した。In vitroで評価した結果、Nluc の103、104番目のアミノ酸の間にHsCen3を挿入したプローブが最も大きなダイナミックレンジ(約250%)と、細胞内のMg2+濃度を評価するのに最適なKd値 (1.0 mM)を有することが明らかになった。さらに、細胞内のMg2+濃度の定量に向けてレシオメトリック型のプローブの作成を試みた。黄色蛍光タンパク質(Venus)と発光タンパク質(Nlucまたはウミシイタケルシフェラーゼ)の間にHsCen3、CorAまたCorA変異体を導入したところ、Nluc- HsCen-Venusが最も大きいダイナミックレンジを示した(約60%)。さらにHsCen3のC末端側から10アミノ酸を削っていったところ、7アミノ酸を削ったプローブ(Nluc- HsCen-dC7-Venus)で劇的なダイナミックレンジの改善が見られた(約360%)。これらプローブが培養細胞内でもMg2+の変化を捉えたことから、イメージングに有用なプローブの構築が確認できた。
|