研究課題/領域番号 |
16K18528
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
末松 和美 (七種和美) 広島大学, 理学研究科, 助教 (60608769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 質量分析 / タンパク質 / 生体分子 / 分析科学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では転写活性化に関与するヒストンのアセチル化に着目し、クロマチンの最小構造単位であるヌクレオソームコアのアセチル化によって誘導される構造やゆらぎの変化を明らかにすることを目的としている。この解析手法として質量分析法を中心とした解析を試みた。 まず、数多くあるヒストン翻訳後修飾のうちアセチル化のみに着目した研究を進めるため、未修飾のリコンビナントヒストンとDNAを調製し、それらから未修飾のヌクレオソームコアを再構成した。ここで使用したDNAは2種類であり、一つはヒストン八量体と最も強い相互作用を持つWidom 601 DNA、もう一つはヒトのセントロメアにあるα-satellite DNAの回文配列である。次に、再構成したヌクレオソームコアにヒストンアセチル化酵素の活性化ドメインであるp300を用いてアセチル化した。アセチル化されたヌクレオソームコアをMALDI-TOF MSを用いて解析することによって、ヌクレオソームを構成するヒストンH2A、H2B、H3、H4のTail領域がアセチル化されることがわかった。また、アセチル化されたヌクレオソームコアをタンパク質複合体をそのまま測定できるネイティブ質量分析で測定した結果、Widom 601DNAのヌクレオソームではアセチル化前後で変化がなかったのに対して、α-satellite DNAではアセチル化によってヌクレオソームコアの構造安定性が低下したことが示唆された。より生体由来のDNAにおいてアセチル化による構造安定性の低下が見られたことから、生体内のNCPではアセチル化によって構造が不安定になることが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた研究のうち、ヌクレオソームの調製とアセチル化による構造安定性の変化については予定していたDNA以外でも行うことができた。その他、アセチル化部位がTail領域であることまでは同定でき、H/D交換質量分析による解析もヒストン全体の解析を始めた段階である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は調製したヌクレオソームの安定性にばらつきがあり、データを取得することが困難であったこともあったので、平成29年度は安定性の高いヌクレオソームの精製をするとともに、安定同位体標識されたヒストンやダイヌクレオソームの調製にも取り掛かる予定である。それと同時にアセチル化部位の同定方法について計画にはない他の消化酵素を使用した実験を行うこと手法を確立し、ペプチドレベルでのH/D交換質量分析についても測定方法を構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、旅費、人件費、その他の経費がそれぞれ少なかったためと考えられる。旅費においては出張の回数が予定よりも少なかった上、実際に出張した際に創薬プラットフォームの連携研究者として出張したこともあり、予定よりも少なくなった。人件費、その他の経費については、学会参加および論文の査読により経費が発生しなかったためと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額については、一部物品費にも使用するが、従来予定していた経費に主に使用する予定である。人件費・謝金の項目では、平成28年度の研究結果をまとめて論文にするための校閲費用に使用する予定である。
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