研究課題/領域番号 |
16K18531
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 暁 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (90595381)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | アミロイド線維 / 分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
アミロイドベータペプチド(Abeta)にはアミノ酸数が40残基のものと42残基のものがあり、それぞれAbeta40及びAbeta42と呼ばれる。Abeta42の方がAbeta40よりもオリゴマー及びアミロイド線維の形成速度が速いことが実験的に知られている。しかしながら、AbetaのC末端二残基がオリゴマー形成速度にどのような影響を及ぼしているのかは明らかになってない。また、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド線維の初期形成はAbeta42の凝集により起こると考えられており、Abeta40及びAbeta42の凝集機構の違いを理解することはアルツハイマー病治療に不可欠である。そこで、本年度はAbeta40及びAbeta42の二量体形成に関する研究をクーロンレプリカ置換法を用いて行った。クーロンレプリカ置換法は水中の生体分子に関して少ない計算コストで効率的な構造サンプリングを実現するシミュレーション手法である。このシミュレーション手法を用いることで効率的にAbetaの二量体形成過程を調べることが可能である。 クーロンレプリカ置換分子動力学シミュレーションを行った結果、実験と同様に、Abeta42の方がより分子間ベータシート構造(二量体)を形成しやすいことが確かめられた。さらに、Abeta40と比較してAbeta42の方が分子内ベータシート構造を形成しやすいことが明らかとなった。この分子内ベータシート構造の安定化にC末端二残基が重要な役割を果たしていることも分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はAbeta全長の二量体形成に関する研究を行った。この知見をもとに今後はより多数のAbeta分子のオリゴマー形成における溶媒pHの役割を調べる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた結果はまだ予備的な段階であり、統計量が十分ではない。そのため、今後はさらにシミュレーションを行い統計量を増やす予定である。さらに、Abeta全長のオリゴマー形成におけるpH依存性を調べるためのシミュレーションも行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 参加を予定していた学会の日程が他の学会と重なり参加を見送ったため。 (使用計画) 平成30年度に開催される Asian Biophysics Association (ABA) Symposium 2018へ参加するために使用する。
|