昨年度に引き続きアミロイドベータペプチド(Abeta)の二量体形成に関する研究を行った。二量体形成はAbetaのオリゴマー形成過程の初期過程である。アルツハイマー病との関連が指摘されているオリゴマーがどのように形成されるのかを明らかにする上で、二量体形成の詳細に関する理解は不可欠である。Abetaにはアミノ酸数が40残基のもの(Abeta40)と42残基のもの(Abeta42)があり、Abeta42の方がオリゴマーを形成しやすいことが知られている。二種類のAbetaの二量体形成の違いを調べることで、オリゴマー形成を引き起こす鍵となる要素を明らかにすることができると考える。そのために、Abeta40及びAbeta42のそれぞれに関して、二分子を水中に入れた系のクーロンレプリカ置換分子動力学シミュレーションを行った。昨年度までのシミュレーション結果で、Abeta42の方がAbeta40よりもベータヘアピン構造を形成しやすいことが分かった。今年度は統計量を増やして結果の信頼性を高めるために、追加のシミュレーションを行った。昨年度までの結果と同様に、Abeta42の方がベータヘアピン構造を形成しやすいことを確認しました。さらに、新たにAbeta42の方がベータヘアピンを形成するために重要なアミノ酸残基の特定に成功した。これらの残基を置換することでAbeta42のオリゴマー形成を抑制できると考えており、アルツハイマー病の治療薬開発に重要な知見を与えることができると期待している。
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