Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は低分子薬の約30%の標的になるなど、創薬において主要な位置を占めている。従来、GPCRの活性評価は下流の細胞応答の計測に依存してきたが、オーファン受容体では下流が未知の場合も多く、何を薬効評価の指標とすればよいか分からない。したがって、GPCR自体を計測して活性を定量する手法の開発が求められる。 本年度は、昨年度までに計測した、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR3)の生細胞内1分子イメージングの結果と、mGluRとは異なるファミリーに属するGPCR8種の1分子計測について論文発表・学会発表・プレスリリースを行った。 本研究により、GPCRの拡散と機能の関係は多くのGPCRに広く共通しており、活性化したGPCRの動きは遅くなることが明らかになった。したがって、1分子イメージングによりGPCRの動きを見ることで新規化合物がGPCRにどのような作用を及ぼすか推定できると考えられる。 さらに本年度は、昨年度まで作成した314種のHaloTag融合GPCRのうち、計24種に関しても1分子イメージングを行った。その結果、計測したすべてのGPCRでGタンパク質共役特異性に依らず、アゴニスト刺激依存的に拡散が遅くなることが示され、1分子イメージングを用いた薬効評価がより広範な受容体に適用できることが明らかになった。今後は、作成したすべてのGPCRについて1分子イメージングを行い、比較解析を行う予定である。 また、本研究では、mGluR3とGタンパク質・クラスリン結合のそれぞれが異なる拡散状態変化に寄与することを示した。今後はGPCRの拡散動態と多様な機能状態との対応関係をさらに解析することで、単一計測でGPCRのシグナルバイアスを定量できる手法に昇華していきたい。
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