研究課題/領域番号 |
16K18534
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小島 理恵子 山形大学, 理学部, 研究員 (60769652)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ERMES / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
近年,異なるオルガネラ同士が膜コンタクトサイトを形成し,機能的に連携することが明らかとなり,その重要性と役割が着目されている。ミトコンドリア外膜と小胞体膜の一部を物理的に結合させるタンパク質複合体として同定されたERMESは,欠損すると酵母において強い増殖阻害を引き起こし,ミトコンドリアの形態やリン脂質組成に異常を示すことが分かっているが,未だにその機能について明確なコンセンサスが得られていない。そこで,ERMES欠損株の増殖阻害を回復させる4つのマルチコピーサプレッサー遺伝子(SPT23, MGA2, YOR228C, YGR250C)について,遺伝子の機能を調べることにより,ERMESの機能を解明することを目的とする。本年度は,delta 9脂肪酸不飽和酵素をコードするOLE1の転写因子であるSpt23とMga2について,ERMES欠損株でSpt23とMga2を過剰発現させると実際にOle1の発現が増えていることを明らかにした。このことから,脂肪酸の不飽和度が上がることにより,脂質膜の流動性が増加し,その結果オルガネラ間の脂質輸送が上昇している可能性が示唆された。また,その成果をFEBS Letters誌に発表した。さらに,ERMESが小胞体からミトコンドリアへのホスファチジルセリン (PS)の輸送に直接的に関与していることを,in vitro PS transport assayを用いて明らかにし,その成果をScientific Reports誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERMESのマルチコピーサプレッサー遺伝子を同定し,脂肪酸の不飽和度とERMESの機能の関係を見出した論文をFEBS Letters誌に発表した。さらに,ERMESが小胞体からミトコンドリアへのホスファチジルセリン (PS)の輸送に直接的に関与していることを,in vitro PS transport assayを用いて明らかにし,その成果をScientific Reports誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は機能未知のYgr250cについて,機能解析を行う。これまでグルコース枯渇時にERMES構成因子(Mmm1)と共局在することが分かっていたが,免疫沈降実験によって分子レベルでの相互作用は検出できなかった。そこでまず,Ygr250cがERMES以外のMembrane contact sites (MCS) 形成に関わっている可能性を調べるため,小胞体や液胞のオルガネラマーカーや,これまでにMCS形成に関わると報告されている因子と共局在するかを顕微鏡観察により行う。またYgr250cには,N末端領域に保存された領域があり,この領域と相互作用するタンパク質が存在している可能性が高いため,Yeast two hybrid法や化学架橋と免疫沈降を組み合わせる方法を用いて相互作用パートナーを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度ということで物品費を多めに設定していたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に消耗品(制限酵素やプラスチック製品)の購入予定があるため,それにあてる。
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