研究課題
ミトコンドリアの分裂因子であるDrp1がKOされ、かつ大規模欠失突然変異型mtDNA(ΔmtDNA)を有するモデルマウス(Drp1 KO/mito-miceΔ)を用い、本年度は特に血球系の病態解析を重点的に実施した。解析の結果、Drp1 KO/mito-miceΔでは、正常なマウスと比較して末梢血中に多くの未分化な赤血球が存在していることが明らかとなった。また、白血球についても正常なマウスと比べて組成が異なっていることもわかった。これらの血球組成の異常がΔmtDNAに起因するのか、Drp1 KOに起因するのか、あるいはその両方が関わっているのかを検討するために、Drp1が正常なmito-miceΔやmtDNAが正常なDrp1 KOマウスも併せて比較したところ、赤血球の未分化性についてはDrp1 KOが、そして白血球組成の変化についてはDrp1 KOによる変化、ΔmtDNAによる変化、両方が影響していると考えられる変化が混在した状況であることが明らかになった。これらの結果は、血球の分化の過程においてミトコンドリアの分裂が関わる要素、ミトコンドリアの正常な呼吸機能が必要となる要素、その両方が関与する要素があるということを意味している。これまで、血球の分化とミトコンドリアのかかわりについてはオートファジーの不全によって分化が抑制されるという報告があるものの、詳細はほとんど明らかにされていなかった。本成果は、血球の分化過程におけるミトコンドリアの役割として、呼吸機能とダイナミクスの両方がそれぞれ重要な意味をもっていることを示唆する、初めての成果と言える。
3: やや遅れている
申請者は、平成29年3月から9月末まで、産前産後休業および育児休暇を取得していた。そのため、当初計画よりやや遅れているが、もともと平成29年度(当初の最終年度)は主として論文化を進める予定であったため、研究そのものの進捗は当初計画と比較して大きく遅れてはいない。現在、得られた成果を論文としてまとめているところである。
研究成果そのものは平成29年度までにおおむね予定していた分を取得できたと考えている。今後はなるべく早急に論文化を進め、具体的な成果を上げていくことを目標とし、産前産後休業や育児休暇による進捗の遅れの影響を極力少なくできるよう努力する。
研究代表者は2017年3月より、産前産後休業および育児休業取得により、約7か月間研究を中断していた。本研究の最終年度に当たる2017年度では、主として成果発表のための論文作成を実施する予定としていたが、この休業によってその作業が若干遅れている。そのため、2018年度にも継続して論文化の作業を進め、次年度使用額の大部分は作成した論文の英文校正に係る費用や、論文の査読者から追加実験を求められた場合の追加実験に係る消耗品費、論文の掲載に係る費用として利用する予定である。また、これまでに得られた成果を学会等の学術集会で発表するための旅費としても一部支出する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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