研究課題
神経細胞は、情報の伝達を担う軸索に分枝を形成して複数の下流領域に神経接続することによって複雑な神経回路を構築し、外的環境や内的状態に応じた適切な脳機能を実現する。軸索分枝形成において、軸索ガイダンス因子や成長因子といった外的因子による分子機構の関与が明らかにされている。一方で我々は、2万通りものアイソフォームの多様性を持つ接着分子であるDscamが細胞自律的に働くことによって軸索分枝を形成することを示し、本研究分野において全く新たな概念を提唱した(He & Kise et al, Science, 2014)。本研究は以上の背景を踏まえて、Dscamが細胞自律的に軸索分枝を形成する分子機構を明らかにすることを目的とする。昨年度までにDscamと結合し、かつ軸索分枝形成に必要な2種類の細胞骨格制御分子を同定することに成功した。本年度は、それらが実際にDscamの下流で働いているのかについて遺伝学的に検証した。Dscamと下流分子のどちらか1種類のみとの二重変異体の表現型は、Dscam変異体の弱い表現型であった。一方、Dscamと下流分子2種類との3重変異体の表現型は、下流分子2つの2重変異体の表現型と非常に似ていた。さらに、2種類の下流分子それぞれを同時に1コピーずつ欠失させた個体では、Dscamの機能獲得型変異体の表現型が強くなった。これら結果は、Dscamの下流で2つの下流分子が協調的に働いていることを強く示唆している。下流分子の結合モチーフに変異を導入したDscamの変異体がもうすぐ完成するので、これらの表現型を確認した後、本研究課題の成果を論文にまとめる予定である。
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EMBO J
巻: 38 ページ: e99669
10.15252/embj.201899669