研究課題/領域番号 |
16K18537
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 昭彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (90612119)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞運動 / 走化性 / 細胞応答 / シグナル伝達 / 粘菌 / 細胞情報 / マイクロ流路 / 情報処理 |
研究実績の概要 |
這いまわる細胞の細胞極性や移動速度(「動く」こと)と方向転換(「曲がる」こと)との間にある関係性を明らかにするために、まず本年度は、細胞の方向転換についての詳細な実験を可能とするマイクロ流路実験系である、”Microfluidic-lighthouse”を開発した。これまでは困難であった、層流と濃度勾配の方向を360°任意の向きに提示、制御して動的な細胞刺激場を作り出すことが可能になった。この新規流路系や、これまでに構築してきたマイクロ流路系を用いて、誘引物質cAMPや葉酸に対する細胞性粘菌の走化性応答動態を解析した。細胞の先導端を特徴づける、アクチン結合タンパク質とGFPの融合タンパク質やPIP3に結合するPHドメインタンパク質とRFPの融合タンパク質を発現させた細胞性粘菌株を作成し、それらを用いて細胞誘引物質であるcAMPや葉酸の動的な場の元での細胞運動の様子のタイムラプス計測を行った。誘引場の動態は、蛍光物質であるフルオレセインやAlexa594を葉酸溶液に混合することによって推定した。その結果、これまでの我々の研究からは、好中球様細胞のfMLPへの走化性や、細胞性粘菌のcAMPへの走化性では、濃度が時間減少する勾配を無視する”整流性”が見られることがわかっていたが、葉酸に対する粘菌細胞の走化性では濃度の時間変化に対して同様な振る舞いを示さず、むしろ濃度が時間減少すると積極的に方向転換を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規実験系の構築に成功し、生細胞の動態観察が順調に進行しているため
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まで行っていた生細胞観察及び解析を進める。今後はより高時間空間分解能での動態解析を進め、さらに一連のシグナル伝達系構成分子の薬剤阻害や遺伝子改変株の利用により、細胞の運動と方向転換を司るルールに迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロ流路作成が予想よりも順調であったため、それに関わる経費が予定よりも少額ですんだ
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の経費に当てる
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