研究課題/領域番号 |
16K18539
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉良 新太郎 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (10711583)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オートファジー |
研究実績の概要 |
申請者は、長期飢餓におけるオートファジーの停止に関与する因子Tag1を見出し、当該年度においてその作用メカニズムについて解析を行ってきた。オートファジーは、オートファゴソームと呼ばれる二重膜構造が細胞質成分を包み込み、これがリソソーム/液胞と融合することで、細胞質成分の分解を行う現象である。申請者が解析対象にしている出芽酵母において、PASと呼ばれるオートファジー関連タンパク質が集積した構造において、オートファゴソーム形成が起こると考えられている。 申請者は短期飢餓において一過的に生じたPASが、長期飢餓で消失することを見出した。さらにTAG1欠損株においては長期飢餓でもPASが形成されたままになることから、Tag1はPAS形成を介してオートファジー停止を制御することを明らかにしていた。 当該年度においては、さらに詳細なメカニズムの解析を行った。PAS形成はAtg関連タンパク質の一つであるAtg13のリン酸化状態により制御されることが明らかにされていた。特に、PAS形成に重要なAtg13-Atg17の相互作用を制御するAtg13-S379残基のリン酸化が重要であることが示唆されていた。Atg13の全体のリン酸化状態をウエスタンブロット法により解析したところ、短期飢餓で一過的に脱リン酸化が起こり、長期飢餓で再リン酸化が起こった。TAG1欠損株においても、野生株と同様であり、差は見られなかった。そこで、Atg13-S379残基の局所的なリン酸化を、リン酸化認識抗体を用いたウエスタンブロット法で解析した。その結果、野生株に比べ、TAG1欠損株では長期飢餓での再リン酸化の程度が弱いことが分かった。このことから、TAG1がAtg13の局所的なリン酸化を制御し、それにより長期飢餓のPASの乖離を促し、オートファジー停止を駆動していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にのっとり解析を進め、長期飢餓におけるオートファジー停止の作用機序の解明を進めることができている。 当初、Atg13-S379の長期飢餓における再リン酸化は観察できていなかった。しかし、タンパク質抽出方法を、より生理的条件を正確に反映させることの可能な方法に変更したことで、Atg13-S379の再リン酸化の観察に繋がった。 この発見から、TAG1によるオートファジー停止の作用機序をある程度明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
TAG1がAtg13の局所的リン酸化を制御し、それによりPASの乖離及びオートファジーの停止を行うというモデルを強めるための実験を行う。PASの形成時には、Atg13-Atg17の物理的相互作用が強まることが知られている。 そこで、長期飢餓においてPASの乖離が起こった際に、Atg13-Atg17の物理的相互作用が弱まるかどうか、免疫沈降法により観察を行う。さらに、PASが形成されたままになるTAG1欠損株において、相互作用が起こったままになるか観察する。 また、同様の目的で、Split GFP法により、長期飢餓のPAS形成能の観察を行う。 Atg13のリン酸化は、栄養豊富な条件ではTORC1により行われるが、長期飢餓における再リン酸化はTORC1以外のキナーゼによって行われることを示唆するデータを得ている。そこで、Atg13の再リン酸化を担うキナーゼを同定するため、キナーゼ欠損株ライブラリーを用いたスクリーニングを行う。TAG1が、そのキナーゼの活性を制御しているか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用額が当初予想より少なかった。また参加予定であった国際会議に参加を見合わせ、研究遂行を優先したため、旅費の支給額が当初予想より少なくなった。論文投稿をまだ行っておらず、投稿にかかる経費を後ろ倒しにしたため。
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