研究課題/領域番号 |
16K18545
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山野 晃史 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (30547526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ユビキチン / RBR型リガーゼ / ミトコンドリア / マイトファジー |
研究実績の概要 |
ユビキチンを基質に付加するE3リガーゼ群のうち、RBR型リガーゼは普段はその活性がオフに制御すると考えられているため、これまでその分子本体が十分に理解されていなかった。我々はRBR型リガーゼの一つであり、損傷ミトコンドリアの除去に重要であるParkinの機能解析を通じて、RBR型リガーゼの活性をモニターする実験系を開発した。具体的にはRBR型リガーゼの活性中心であるシステイン残基をアラニン残基に置換し、N末端にホモ2量体を形成するAshタグを融合させたプラスミドを作成した。そしてホモ4量体の形成能を有するアザミグリーンを融合したE2酵素とともに培養細胞に発現させた。RBR型リガーゼが活性化するとE2酵素と相互作用するため、両者の相互作用を介してアザミグリーンのオリゴマー化が促進される。つまり顕微鏡観察で、E2酵素に付加したアザミグリーンのオリゴマー化を指標にして、RBR型リガーゼがどのような条件で、細胞内のどの区画で活性化しているかを知ることができる実験系を開発した。実際にParkinをRBR型リガーゼとして使用した場合、通常の培養条件下ではE2酵素(UbcH7)に付加したアザミグリーンはサイトゾルに局在するが、バリノマイシン添加によってミトコンドリアの膜電位を消失させ、Parkinを活性化させると、アザミグリーンはミトコンドリア膜上でオリゴマー化し、蛍光強度の局所的な増加が観察された。さらにこの実験系を機能未知のRBR型リガーゼに応用した結果、核内で活性し、複数のリング状の構造を形成するリガーゼがあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Parkinはミトコンドリア膜電位の消失で不良ミトコンドリアへと移行し、不良ミトコンドリアのユビキチン化を促進することが知られている。そこでParkinを活性化の指標に用いて、RBR型リガーゼ全般の活性化モニターに応用可能な実験系を構築した。RBR型リガーゼ全般に共通する特徴は、ユビキチン分子を受け取るシステイン残基を持つこと、活性化するとE2酵素と相互作用することである。これらの特徴をうまく利用し、細胞内でRBR型リガーゼとE2酵素との相互作用を顕微鏡観察できる手法を開発した。まず、RBR型リガーゼと安定に相互作用するE2酵素の選別を行ない、UbcH7を選抜した。Parkinの野生型をそのまま使用するとユビキチン分子が即座に基質に受け渡されるため、UbcH7との安定な相互作用が観察できないことからRBR型リガーゼの活性中心であるシステイン残基をアラニン残基に置換した。その結果、ミトコンドリア膜電位消失時に特異的にParkinとE2が相互作用することを顕微鏡で観察することに成功した。さらにこの方法を他のRBR型リガーゼに応用することで、核内のある特定の領域でリング状の構造を形成するリガーゼがあることがわかった。このリング状の構造にはE2酵素が集積すること、内在性のユビキチンが集積することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
E2酵素はヒトゲノムにおよそ40種類コードされている。そこで本研究で構築した実験系を応用し、Parkinの活性化に必要となるE2酵素の特定を行なう。これまで、E2酵素とE3リガーゼの相互作用は主にin vitroで解析されてきたが、本研究で構築した実験系はその相互作用をin cellで検出することができると期待される。その他のRBR型リガーゼについても上記の実験を行ない、E2酵素に付加したアザミグリーンがオリゴマー化する(つまり目的RBR型リガーゼが活性化する)細胞内局在とその条件を網羅的に調べる。また、機能未知のRBR型リガーゼが核内でリング状の構造を形成し、そこで活性化することがわかった。そこで、この条件でこれと相互作用する因子、あるいはその近傍に局在しているタンパク質を質量分析を用いて調べる。特に、RBR型リガーゼの活性化にはユビキチンやユビキチン様タンパク質が必要であると考えられるため、これに注視する。また、CRISPR/Cas法でノックアウト細胞を作成し、質量分析で同定された相互作用因子がそのRBR型リガーゼの基質であるかを調べる。
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