本研究課題では、もともと正中線上に一つの器官が左右に有対化する現象の、進化発生学的メカニズムを明らかにすることを大きな目標にしている。具体的には、金魚品種およびその近縁種ゼブラフィッシュの変異体で見られる「二叉に分かれた尾ヒレ(Twin-tail)表現型」をモデルとし、どのような発生メカニズムの変更がTwin-tail表現型を表出させるのかを解析する。 平成30年度は、遅れていたトランスジェニックフィッシュの確立とともに、それらを用いた機能解析を行った。これまでの研究結果により、FGFシグナルとBMPシグナルがTwin-tail表現型に必要である可能性が示唆された。そこで、FGF阻害剤SU5402およびBMPシグナルK02288を使って阻害実験を行った結果、両者の機能欠損によりTwin-tail形成不全が時期特異的に起こった。さらにそれらの機能獲得をトランスジェニックフィッシュを用いて行ったところ、とくに発生初期のBMP過剰発現において、Twin-tail形態の表現型模写を行うことができた。従って、Twin-tail表現型にはBMPシグナルの初期胚での変更が重要であることが分かった。昨年度までの成果により、Twin-tail形態は、腹側正中ヒレ領域の拡大によっておこることが明らかになっており、それと合わせると、発生初期の腹側領域の拡大がそのままTwin-tail表現型に繋がっていることが示唆される。また、FGFシグナルは、そのBMPシグナルの変更で起こった拡大した形成領域内で、ヒレ構造の形態形成に用いたられていることが考えらる。現在、これまでの研究成果をまとめ論文投稿準備中である。
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