研究課題/領域番号 |
16K18547
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
溝口 貴正 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (10645419)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Mib / p120ctn / ユビキチン化 / 細胞移動 |
研究実績の概要 |
Mind bomb(Mib)はE3ユビキチンライゲースであり、標的タンパク質をユビキチン化することで、標的タンパク質の機能制御や安定性に関わっている。Mibは細胞間シグナルの一つであるNotchシグナルのリガンドをユビキチン化することでリガンドのエンドサイトーシスを制御し、Notchシグナルの正の制御因子として機能することが知られている。本研究課題で申請者はNotchシグナル制御とは独立にMibの細胞移動における機能を明らかにした。 本研究課題ではMibの新規標的タンパク質としてp120catenin (p120ctn, Catenin delta1としても知られる)を同定した。p120ctnは細胞移動制御に関わるRac1の活性化やCadherinの局在制御に関わることが知られている。培養細胞を用いた生化学的な解析より、Mibはp120ctnと相互作用すること、Mibは自身のユビキチンライゲース活性依存的にp120ctnの547番目のアミノ酸であるリジンをユビキチン化すること、ユビキチン化されたp120ctnはRac1を活性化する機能が低下することを明らかにした。 さらにHeLa細胞やゼブラフィッシュの側線原基をモデルとしたライブイメージング解析により、Mibによるp120ctnのユビキチン化を介したRac1活性の制御が"persistent directional cell migration"と呼ばれる 指向性のある細胞移動に重要であることを見出した。このことはMibがp120ctnのユビキチン化を介してRac1活性を適切なレベルに保っていることが細胞集団において個々の細胞が指向性を持った移動を行うために必要であることを示唆している。 以上の研究成果はMizoguchi et al.,Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Oct 31;114(44):E9280-E9289にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに研究が遂行でき、また研究成果を論文発表できたことからおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題により、Mib-p120ctn-Rac1経路が細胞移動において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。しかしながら、Mib機能阻害時における細胞移動の振る舞いは細胞種で異なることも新たに見いだされた。例えば本研究で用いたHeLa細胞とゼブラフィッシュ側線原基では双方細胞の移動方向の指向性は失われたが、Mib機能阻害時にHeLa細胞ではコントロールと比べ細胞移動速度が上昇し、逆にmib変異体の側線原基細胞の移動速度は野生型の側線原基細胞より移動速度が低下した。これは細胞接着の状態が異なるなど他の因子による影響であると考えられる。HeLa細胞ではMibのノックダウンでN-Cadherinの発現が低下することが報告されているが、mib変異体ではN-Cadherin, E-Cadherinの発現や局在に変化は見られなかった。p120ctnはCadherinの局在制御を行うことが知られている。このことから細胞種によってはMibによるp120ctnのユビキチン化はCadherinの局在制御にも関わる可能性が示唆される。また本研究を進める過程においてMibの機能阻害は接着斑の構成因子の安定性にも影響することを示すデータを得ている。今後はMibがどのようにして細胞接着に関わっているのか、また細胞種によってなぜMib機能阻害時の影響の違いが出るかを明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初の目的通り、Mibによるp120ctnのユビキチン化の細胞移動における機能を明らかにすることができた。成果はPNAS.2017 Oct 31;114(44): E9280-E9289で報告した。しかしながら本研究過程においてp120ctn以外にもMibにより機能制御されうるタンパク質の候補が得られた。Mibの細胞移動における機能をより精緻に明らかにするためにはこれらの新規候補タンパク質の機能解析も重要であるため。 (使用計画) Mibによって制御されうる候補タンパク質として、細胞接着に関わる因子が得られた。そこでMibによってこれらの因子がどのような制御を受けるか解析する。予備実験より、これらの接着因子はMibにより分解が促進されることを示すデータを得た。そこで培養細胞を用いた生化学的な解析を行い、この仮説を確かめる予定である。そこで次年度使用分は培養細胞を用いた生化学的解析に必要な培養液や各種抗体等の試薬、細胞培養用ディッシュやプラスチックチップ等の消耗品の購入に充てる。
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