研究課題/領域番号 |
16K18550
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 昌和 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (60580496)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞競合 / ゲノム編集 / Hippoシグナル |
研究実績の概要 |
これまでのin vivoにおける細胞競合の検証は、主にショウジョウバエを用いた研究によるものが多い。私たちはこれまで哺乳類の培養細胞においてHippoシグナルの違いにより細胞競合がおこることを示してきたが、マウス個体発生における研究例は非常に少ないのが現状である。その主な要因としてマウス遺伝学は手間と時間がかかることが挙げられるが、私はエレクトロポレーションによる簡便なマウスゲノム編集法を開発し、熟練した技術を必要とせず、短時間で遺伝子改変マウスを作成する事を可能にした(Hashimoto et al. Dev.Biol. 2016)。 そこで私たちはこの技術を用いて、全身で蛍光レポーターを発現するマウス受精卵に変異を起こし、その胚盤胞からGFPやmCherryで標識された様々な変異Embryonic Stem Cell(ESC)を樹立した。これらのESCは胚寄与率が非常に高く、8細胞期胚に2種類のESCを導入することによって100%ESC由来のモザイク胚を作成することができる。これにより、胎仔あるいは生後個体の各組織における野生型細胞(mCherry)と変異細胞(GFP)の比率をみることで細胞競合の検証を行うことができるようになった。私たちは本手法を用いて、Hippoシグナルの構成分子であるTead活性の弱い細胞が、野生型細胞によってE5.5までに排除されることを見いだした。この結果はTead活性に依存的な細胞競合現象がマウスの初期胚でも起こっている可能性を示唆しており、この現象がどのような分子メカニズムでおこるのか今後詳細をつめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目で細胞競合の検証モデルをマウスで構築し、なおかつノックアウトして競合現象が見られる遺伝子を単離することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
Tead活性の弱い細胞がなぜ排除されるのか、その分子メカニズムについて今後検証して行く。また、なにも操作していないy生型胚でもこのような細胞競合現象がみられるのかどうか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞競合検証実験の手法が予想外に早く確立できたこと、また ES細胞などの培養は極力最小限のスケールでのみ行なっていたため、試薬類の消耗がかなり抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞競合を引き起こす分子メカニズムを解明するため、競合現象が起きている状態でRNA-seq解析など行い、関連分子のスクリーニングにかかる費用などに充当する。
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