研究課題/領域番号 |
16K18553
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 尚文 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (60732716)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞初期化 / 初期発生 / リボソーム / 微生物 / 進化 |
研究実績の概要 |
申請者はヒトの主要な腸内細菌の一種である乳酸菌を皮膚細胞に取り込込ませると、三胚葉に分化可能な多能性細胞塊が生じることを発見した(Ohta et al., PLOS ONE 2012)。この細胞塊は既知の多能性幹細胞と異なり、細胞胞増殖が停止していて、奇形腫形成も生じない特徴を持つ。申請者は乳酸菌がもつ多能性誘導因子の同定を行い、生化学的な分離・同定によって多能性誘導因子がリボソームであることを明らかにした(投稿中)。 リボソームは全ての生物がもつRNAからタンパク質を翻訳するRNAとタンパク質から構成される細胞内小器官として認識されている。しかし、近年、リボソームタンパク質の変異・欠損は高等動物や植物の発生に異常をもたらすことが報告されており、リボソームの翻訳以外の機能も再認識されるようになった。申請者らの研究によって、リボソームの新たな可能性として、リボソームが細胞分化レベルの制御に関わっている可能性を示唆できた。これは細胞を効率的に利用するように進化を続けている生物にとって、初期発生時から存在するリボソームを翻訳以外の機能に用いることは想像に難くない。 この申請ではリボソームを導入することによって生じた多能性細胞の性状を解析した。リボソームを導入した細胞は細胞が集合した細胞塊を形成するが、既知の多能性細胞であるES細胞やiPS細胞とは異なり、増殖を停止した状態となるが、細胞周期の同調も見られない。細胞塊を構成する細胞は初期化細胞のマーカーであるNANOGやOCT3/4についても、個々の細胞が多様な遺伝子発現パターンを示す不均一な細胞の集合体であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年4月16日、最大震度7の熊本地震が発生した。申請者の所属する研究室は12階建てのビルの12階にあり、甚大な被害を受けた。研究室が再稼働するまでにほぼ1ヶ月を要し、また機材の80%以上は被害を受けたため、修理や代替え機の導入までを含めて、28年度末までかかることとなった。建物の損害はまだ回復していないため、修復等に関係して来季も影響があるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
地震の被害から、研究機材はおおよそ回復したので、計画通り研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月16日熊本地震が発生し、研究の遂行に大きな影響が出た。機材等の損壊については復興予算からの支援によっておおよそまかなうことができたが、実験不能な時期が数ヶ月あったため、それに伴って計画通りの試薬等の購入を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在は研究室レベルでは地震の被害から回復したので、計画通り研究を実施する。
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