研究課題
申請者はヒト腸内細菌の一種である乳酸菌を皮膚細胞に取り込ませると、三胚葉由来の細胞に分化可能な細胞塊が生じることを発見した(Ohta et al., PLOS ONE 2012)。乳酸菌から細胞分化を調整する分子を生化学的な精製を繰り返し、細胞塊形成活性が高い分画を得た。分画成分をLC/MS-MS解析で同定した結果、分画にはリボソームタンパク質が多数含まれていることが判明した。超遠心法で乳酸菌からリボソームを分離し、細胞塊形成試験を行った結果、強い細胞塊形成活性があったことから、乳酸菌の中に含まれる多分化能を誘導する分子はリボソームであることが判明した。リボソームはすべての生物が持つタンパク質合成装置である。そこで乳酸菌だけでなく、大腸菌や枯草菌、出芽酵母、ヒト皮膚培養細胞からも超遠心法でリボソームを分離し、活性測定した結果、すべてのリボソームが細胞塊形成活性を持つことが判明した。リボソームは巨大な細胞内小器官であるため、超遠心法で分離できるが、リボソームに付着した物質や、同じ大きさの夾雑物を取り除くことは難しい。そこで、His-tagをリボソームタンパク質のひとつに挿入したリボソームを免疫学的に精製し、高純度のリボソームを得た。His-tagリボソームは高い細胞塊形成活性をもち、また、His-tag抗体を使った免疫細胞染色によって、外来リボソームは細胞質だけでなく核にも運ばれていることが確認できた。リボソーム誘導細胞塊を免疫細胞染色すると、多能性マーカーが発現している細胞が全体ではなく、ポツポツとモザイク状に存在していることが判明した。さらにsingle cell qPCRによって、多能性マーカーが高く発現している細胞と、低く発現している細胞が存在していることが判明した。この結果を論文に発表した(Ito et al., Scientific Reports 2018)
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 1634
10.1038/s41598-018-20057-1
http://srv02.medic.kumamoto-u.ac.jp/dept/devneuro/