研究課題/領域番号 |
16K18558
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
乾 雅史 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 室長 (20643498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SOX9 / SUMO化 / Ubiquitin化 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の発生過程において軟骨や骨細胞の分化過程については理解が進んでいるが、骨の形の正確性を担保するメカニズムは未だ不明である。SOX9遺伝子は軟骨の分化過程に発現し、軟骨の形成に重要な役割を果たすマスター転写因子であり、Sox9遺伝子のヘテロ変異マウスやトランスジェニックマウスが骨格に異常を示すことから、正常な骨格形成のためには生体内でSOX9の活性は定量的に厳密に制御されていなければならないことが示されている。本研究において私はSOX9蛋白質の翻訳後修飾による活性制御が正確な骨格形成に果たす役割を解明するため、ゲノム編集技術を用いて翻訳後修飾標的アミノ酸K396に点変異を導入したSOX9K396Rマウスを作製し、その骨格を解析した。SOX9K396RマウスではSOX9標的遺伝子の発現上昇や内軟骨性骨化の遅延等SOX9の機能亢進の表現型が見られ、また長管骨が太く短くなることが観察された。軟骨細胞におけるSOX9蛋白質の量に変化がなかったことからK396に対する翻訳後修飾は分解性ではなく制御性であることが示唆された。K396はSUMO化の標的であることからSUMO-SOX9 fusion constractを作成しレトロウィルスにより軟骨細胞に強制発現してその機能を解析したところ、SUMO-SOX9は野生型SOX9の標的遺伝子の発現を抑制することが示された。またSOX9のSUMO化はSOX9のDNA結合ドメインに依存的であることが明らかとなり、この翻訳後修飾はSOX9のDNA結合及び標的遺伝子の活性化が引き金となるネガティブフィードバック機構である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画申請当初に計画したH28年度の研究内容である「SOX9K396Rマウスの組織学的解析」及び「SOX9K396を介した翻訳後修飾の分子メカニズムの解明」については計画通り順調に進めることができている。また、H29年度に計画している「SOX9K396Rマウスの軟骨細胞の分子レベルでの解析」や「SUMO-SOX9、Ub-SOX9 の制御機構の検討」についても条件検討を進めており、計画通りに進めることができる状況である。「SOX9 の他のリジン変異体の作製」についても培養細胞レベルでの検証を進めており、有望な変異体があればマウスの作製にも進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は申請当初の研究計画に則り「SOX9K396Rマウスの軟骨細胞の分子レベルでの解析」及び「SUMO-SOX9、Ub-SOX9の制御機構の検討」を進める。具体的には前者についてはSOX9K396Rマウスの胎生 11.5-12.5 日胚の四肢から間充織細胞を採取し、micromass cultureを行い軟骨分化刺激や骨分化刺激を与えた際の細胞の応答をCollagen Type IIやAggrecanなどのマーカー遺伝子の発現やアルシアンブルー染色によって評価する。もしK396R変異がSOX9の機能を亢進させる場合、軟骨分化が促進されることが予想される。また、後者の課題については哺乳類培養細胞HEK293Tを用い軟骨分化を制御することが知られているBMP、TGFβ、Wntの各シグナルで刺激することでSox9のユビキチン化やSUMO化が変化するかを検討する。軟骨分化に対してBMPは促進的、Wntは抑制的であることが知られているため、SOX9の修飾がBMPで減少あるいはWntで増加するような場合、これらの翻訳後修飾はシグナルによる軟骨分化の制御メカニズムの一環と考えられ、また逆にBMP刺激により翻訳後修飾が増加するような場合はネガティブフィードバック機構であると考えられる。これらの既知のシグナルに加え、細胞の培養の基質条件や伸展刺激など力学的な刺激による翻訳後修飾の変化にも着目する。 本年度申請者は研究機関を移動したため、施設間の移動に伴いK396R変異マウスを使用出来ない期間が生じる。そのため当初マウス初代培養細胞を用いて行う予定であったアッセイについて、株化された培養細胞で行うことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(H28年度)は予定していた学会への参加を見送り研究を進めることを優先したこと、年度途中に所属研究機関の移動が決定したため動物(マウス)の維持数を減らしその経費が削減されたこと、条件検討の実験を予定していたより効率よく行うことができたことなどにより当初使用予定の額を使用せず次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(H29年度)は研究機関の移動があったため新機関において動物(マウス)の系統を飼育開始するための経費(凍結胚の移動費、移植用マウスの購入費、マウスの繁殖用の飼育コストなど)が必要であり、前年度(H28年度)よりの次年度使用額をこれらの費用に充てる。また、H29年度分として請求した助成金については当初計画通りに研究を進めるために使用する。
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