脊椎動物の発生過程において軟骨や骨を構成する各細胞種の分化過程は解明が進んでいる一方、骨の形態を形成する過程や正確性を担保するメカニズムは未解明である。SOX9遺伝子は軟骨の形成に必要不可欠な役割を果たすマスター転写因子であり、Sox9遺伝子のヘテロ欠損マウスや骨格特異的トランスジェニックマウスが骨格に異常を示すことから、正常な骨格形成のためには生体内でSOX9の活性が定量的に厳密に制御されていなければならないことが示唆される。本研究において私はSOX9蛋白質の翻訳後修飾による活性制御が正確な骨格形成に果たす役割を解明するため、ゲノム編集技術を用いて翻訳後修飾標的アミノ酸K396に点変異を導入したSOX9K396Rマウスを作製し、その骨格を解析した。本年度はSOX9のSUMO化がその機能に及ぼす影響を分子レベルで評価することを目的としSUMO化SOX9が野生型SOX9を抑制するより詳細な分子メカニズムを解明するためにSUMO化SOX9に結合することが期待される転写抑制因子TLE4に着目して研究を行なったが、予想に反してTLE4とSUMO化SOX9の協調的な働きは観察されなかった。この結果からTLE4以外のSUMO化SOX9結合パートナーを探索することとし、免疫沈降と質量分析を用いてunbiasedに結合タンパク質同定を行うための実験系を検討した。哺乳類培養細胞HEK293Tを用いて野生型SOX9と共沈降するタンパク質とSUMO化SOX9と共沈降するタンパク質を比較したところ、CBB染色や銀染色で明確な差を示すバンドが得られたため今後これらのバンドに含まれるタンパク質を質量分析で同定・解析していく予定である。
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