植物-根粒菌共生において、窒素固定能を有する機能的な根粒の形成には、根粒形成過程の適切なタイミングにおいて根粒菌が分裂中の皮層細胞に侵入する必要がある。ミヤコグサやタルウマゴヤシに代表されるモデルマメ科植物では、根粒菌の宿主細胞への侵入は共生時特異的に形成される感染糸と呼ばれるトンネル状の構造によって担われている。その一方で、一部のマメ科では、根毛や感染糸を介さない細胞間侵入により共生成立が支えられている。感染糸を介した細胞内侵入システムは細胞間侵入を基礎にして進化してきたことが示唆されているが、そのシステムの構築や根粒菌の侵入様式の多様性に関わる分子機構の理解はほとんど進んでいない。本研究は、根粒形成が顕著に遅延するユニークな表現型を示すミヤコグサ late nodulation (lan) 変異体を用いて上記分子機構の解明を目指す。 前年度までに行った表現型解析により、lan変異体では、感染糸を介した細胞内侵入はほとんどみられず、根粒菌は細胞間侵入に類似した様式により、宿主細胞へ侵入することがわかっている。H29年度は、この表現型を時空間的にさらに解像度をあげて調査し、lan変異体の表現型の理解を深めた。また、lan変異体と根粒形成に関わる既知の変異体との2重変異体を用いた解析から、根粒形成のシグナル伝達系におけるLANのおおまかな作用点を明らかにした。さらに、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集やトランスポゾンLORE1のタグラインを用いて、LAN遺伝子の変異箇所と機能の関係性を明らかにした。
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