研究課題/領域番号 |
16K18563
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 若奈 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10725245)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腋芽メリステム / 幹細胞 / イネ / 分げつ / TAB1 / TOB / 形態形成 |
研究実績の概要 |
腋芽形成が顕著に阻害される aba 変異体に着目して解析を行った。腋芽の発生過程の組織学的な解析や、腋芽の分化開始を司るマーカー遺伝子の発現解析から、aba 変異体では、腋芽形成のごく初期から異常が生じていることが示唆された。 他にも、YABBY 転写因子をコードするイネの TOB 遺伝子に着目して研究を行った。以前の研究から、TOB1 は花器官から花メリステムに働きかけ、花メリステムの活性を正常に維持するために必須であることを示していた。今回は、TOB1 に近縁な TOB2 と TOB3 を含む3つの TOB 遺伝子の機能を解析した。tob1 変異体において TOB2 と TOB3 の発現をそれぞれ単独で抑制した場合、tob1 の花器官の異常が昂進されたが、栄養成長期においては顕著な異常は観察されなかった。次に、tob1 変異体において TOB2 と TOB3 の発現を同時に抑制した。その結果、生殖成長期においては花が全く形成されず、花序は穂軸とブランチのみになった。この結果から、3つの TOB 遺伝子は冗長的に働き、花器官だけではなく花メリステムそのものの形成にも必須であることが明らかとなった。また栄養成長期においては、分げつ形成が強く抑えられた。この結果から、TOB が腋芽形成に関与している可能性が示唆された。3つの TOB 遺伝子は、栄養成長期および生殖成長期において類似した発現パターンを示した。栄養成長期においては、葉原基において初期から特異的な発現パターンを示したが、茎頂メリステムや腋芽メリステムでは発現しなかった。TOB 遺伝子は、何らかのシグナルを介して葉原基から腋芽メリステムに作用し、腋芽形成あるいはその後の分げつ形成に関与している可能性が考えられる。本研究成果に関する論文が New Phytologist 誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的にほぼ計画どおりに研究を遂行できている。 腋芽形成における TAB1 やメリステム関連遺伝子の役割を明らかにするための機能解析やその準備(交配等)を、当初の計画通りに行うことができている。また、腋芽形成を制御する新たな因子の同定を目指して行っている、腋芽形成に関わる突然変異体の解析においても、順調に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
イネの腋芽形成過程における幹細胞の維持機構を明らかにするために、既知のメリステム関連遺伝子に着目して機能解析を進めていくことを計画している。それら遺伝子の変異体と tab1 変異体との交配を行ったので、次年度は二重変異体についても表現型の解析を行う予定である. 以前の研究から、イネの腋芽形成において TAB1 と WOX4 遺伝子が機能分化している可能性を示唆していたので、その機能分化のメカニズムを明らかにすることを目指して、TAB1 と WOX4 の下流遺伝子の比較解析を行う。まず TAB1 と WOX4 の発現を人為的に誘導するためのコンストラクトを作製し、それぞれカルスに形質転換を行う。そしてそれら形質転換体を用いて、ゲノムワイドな解析を行う予定である。 さらに、以前から着目していた腋芽メリステムの形態が若干異常となる 2 つの突然変異体についても、詳細な表現型の解析と原因遺伝子の同定を行う。
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