デルフィニウムはアントシアニンの7位が複雑な修飾を受けることにより、濃青色の花色を呈している。これまでの研究結果から、アントシアニンの7位にグルコースとベンゾイル基が 1 つずつ交互に 2 回繰り返して結合している構造のビオルデルフィンまでの修飾酵素遺伝子を同定している。一方で、アントシアニンの 7 位にグルコースが 3 つ連続して結合した構造以降のシアノデルフィンにいたる修飾酵素遺伝子については未同定のままである。今年度までの研究から、ビスデアシルシアノデルフィンをアクセプター、液胞内での糖およびアシル基供与体である pHBG をドナーとして花からの粗酵素による酵素活性の検出を試みたが、生成物の活性は得られなかった。さらにシアノデルフィンを蓄積している様々な品種を集めて、pHBG(p-ヒドロキシベンゾイルグルコース) をドナーとして花から抽出した粗酵素でのシアノデルフィンに至る酵素活性の検出を調査したが、どの品種においても新規生成物の活性は確認されなかった。これらの結果から、ビオルデルフィン以降のアントシアニンの修飾では、pHBG はドナーとして働いておらず、他の糖供与体およびアシル基供与体の存在が考えられた。このため、まず、ビオルデルフィンを蓄積している品種とシアノデルフィンを蓄積している品種での花における低分子化合物の比較解析を行なった。この結果、pHBG のグルコースの先にもう一つグルコースが結合した構造の存在が示唆された。さらに、これまでに報告例がない新規のアントシアニン構造の存在も示唆された。この構造はビスデアシルシアノデルフィンに一分子だけベンゾイル基が結合した構造であり、特定の育種系統のみで見られる構造であることが考えられた。
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