これまで洪水に対するイネ育種では、洪水時に生長を抑制することでエネルギー消費を抑える成長抑制戦略と、浮イネのような茎葉伸長による成長促進戦略が採られてきた。前者においては育種的な応用が進められている一方で、後者の戦略においては育種的な応用は進んでいない。この原因として、急激な茎葉伸長には複数の遺伝子による複雑な制御機構の存在や、伸長時のエネルギー消費により収量性が減少するなどの理由が挙げられる。しかし、気候変動による洪水増加に対して、この2つの戦略は洪水耐性イネの作出の両翼を担うものであり、浮イネの急激な伸長の制御メカニズムを解明し育種に利用することは洪水地域でのイネ育種に貢献できると考える。
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