微小管は植物細胞の分裂や伸長に必須の細胞骨格である。中心体を持たない植物において、微小管がどこでどのように作られるかを明らかにすることは重要な課題である。近年、微小管側面からの微小管新生(いわゆる枝分かれ微小管形成)が見いだされており、この枝分かれにオーグミン複合体とγチューブリン複合体という二つのタンパク質複合体が関与することが示されている。しかしながら、精製したタンパク質を用いて微小管の枝分かれ現象を再現した報告はいまだになく、枝分かれ現象の分子機構の解明には至っていない。 本研究では、植物細胞から構造・活性を保持したγチューブリン複合体、オーグミン複合体およびチューブリンを精製し、これらを用いて顕微鏡下で微小管の枝分かれを再現することを目標とした。 まずγチューブリン複合体を生理的条件下で精製する方法の確立を目指した。γチューブリン複合体の構成因子であるMzt1aのC末端にGFP-strep tag II-Hisを融合したコンストラクトをシロイヌナズナ培養細胞T87に形質転換した。得られた形質転換体からStrep-Tactinを用いてタンパク質精製を行ったところ、既知のγチューブリン複合体構成タンパク質が得られた。しかし極めて多くの内在性ビオチン化タンパク質の共精製が避けられなかったため、Niカラムを用いた二段階目の精製を行った。結果、γチューブリン複合体が高度に精製された。またこの精製γチューブリン複合体が微小管重合活性を保持していることも確認できた。 二段階精製の有効性が確認できたので同様の手法でオーグミン複合体の精製に取り組んだ。しかしながら、オーグミン複合体は解離しやすく、時間のかかる二段階精製には不向きであることが明らかとなった。今後は生理的条件下で、1ステップでかつ高度に精製できる方法(例えば免疫沈降後のペプチド競合溶出など)を検討する必要があると結論づけた。
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