1. RNA代謝異常のセンシングと分子情報化の実態解明 pre-mRNAスプライシング阻害剤に加え、各種細胞ストレス誘導剤をシロイヌナズナ芽生えに添加し、pre-mRNAスプライシング動態を調べた。その結果、NO代謝やATP代謝、また葉緑体の機能をかく乱する薬剤がpre-mRNAスプライシングパターンに強い影響をもたらすことが明らかになった。さらに、こうした異常の一部は、重要なスプライシング制御分子である小分子ノンコーディングRNA、snRNAの蓄積量の変化と連動していることも分かり、細胞ストレスがsnRNA(あるいはsnRNP)レベルを介してmRNA代謝に影響する可能性が示された。
2.転写-RNA代謝カップリング制御と細胞増殖制御のリンクの解明 新規に同定したスプライシング異常変異体で発現が異常亢進している転写因子CPNDについて、RNA-seqデータをもとにした下流因子候補についてqRT-PCR解析を行い、srd2-1やrid1-1におけるこれら遺伝子の発現異常を実験的に確かめた。こうした発現異常はsrd2-1 cpnd およびrid1-1 cpnd二重変異体では緩和されており、srd2-1およびrid1-1の細胞増殖再開異常が、CPNDを介して起こっているという仮説を支持する結果であった。さらにCPNDホモログであるCPNLもスプライシング阻害によって発現誘導されることを明らかにし、スプライシング異常の下流ではCPNDやCPNLといった複数の転写因子による転写調節が起こった結果、細胞増殖が阻害されている可能性を見出した。
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