研究実績の概要 |
澱粉構造を制御する分子機構は未解明な部分が多いが、これまでの研究から、澱粉生合成関連酵素であるStarch synthase (SS)I, SSIIa, Branching enzyme (BE)I, BEIIbなどが、高分子量の酵素複合体を形成していることが明らかになっている。本研究では、野生型イネの酵素複合体の構成成分を欠損したイネ変異体を用いて、特定の澱粉生合成関連酵素が欠損した場合に、どのように酵素間相互作用が変化するかを明らかにした。 SSIの活性が野生型の約半分に低下したイネ変異体の登熟種子から抽出した可溶性タンパク質をゲル濾過法で分析したところ、他の澱粉生合成関連酵素の溶出パターンに大きな変化は見られなかった。一方、SSIが完全に欠損したイネ変異体の登熟種子から抽出した可溶性タンパク質をゲル濾過法で分析したところ、野生型とは異なり、200-400 kDaに溶出するSSIIaとSSIVbの量が減少し、逆に、約700 kDaに溶出するSSIIaとSSIVbの量が増加することが明らかになった。 以上のことから、1)野生型に見られる200-400kDaの酵素複合体の形成には、一定量のSSIが必要であること、2)SSIが完全に欠損すると、他のSSアイソザイムの溶出分子量が変化すること、が示唆された。 上記の変異体は、SSIIaの活性が低いジャポニカ米を親にしている。SSアイソザイム間での相補作用を明らかにするため、SSIまたはSSIIIaが欠損し、SSIIaが高活性型の変異体を新たに作出し、その澱粉構造を明らかにした。その結果、1)SSIはSSIIaとSSIIIaの機能を相補できないこと、2)SSIIaはSSIの機能は相補できるが、SSIIIaの機能は相補できないこと、3)SSIIIaはSSIとSSIIaの機能を相補できないこと、が明らかになった。その他にも、SSIIaが高活性型でBEIIbを欠損した変異体の作出、分析も行った。
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