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2016 年度 実施状況報告書

葉緑体チラコイド内腔におけるレドックス制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K18573
研究機関京都産業大学

研究代表者

桶川 友季  京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (10582439)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード植物 / 光合成 / チオレドキシン / レドックス / 還元力伝達
研究実績の概要

葉緑体ストロマでの研究に加え、チラコイド内腔での酸化システム還元システムを含めたレドックス制御に関する研究に注目が集まっている。酸化システムに関してはLTOタンパク質が関与することがわかっており、その標的タンパク質が同定された。しかし、還元システムに関してはCcdA とHCF164 がチラコイド内腔への還元力伝達に関与することが明らかとなっただけで、その詳細な分子機構、CcdA、HCF164 による標的タンパク質のレドックス制御の生理学的な意義はわかっていない。
本年度はccda、hcf164 変異株の表現型の回復実験から、チラコイド内腔でのレドックス制御の重要性を明らかにすることを目的に実験をおこなった。HCF164 のクラミドモナスのホモログであるCCS5 の欠損は生育阻害を引き起こすが、還元剤であるDTTを生育培地への添加することよって生育の回復を示すことが明らかになっている。そこで、生育阻害を示すシロイヌナズナのccda変異株の表現型が回復する条件を検討した。その結果、ccda変異株ではDTTでは表現型の緩和は見られなかったが、別の還元剤であるTCEPを生育培地へ1mM添加することによって生育が部分的に回復することを明らかにした。
さらに、単離チラコイドを用いたin vitro の系でCcdA、およびHCF164 を特異的に還元するTrx を特定することを目的としてタンパク質の還元アッセイをおこなった。シロイヌナズナには少なくとも5グループ10種類のストロマ局在のTrxアイソフォームが存在する。しかしどのアイソフォームがチラコイド内腔への還元力伝達に関与しているのかわかっていない。そこで精製したTrxタンパク質と単離チラコイドを用いてCcdAとHCF164が還元される条件を検討し、Trx f1とTrx m1によってCcdAが還元される条件を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究実施計画であげていた通り、シロイヌナズナのccda変異株の表現型回復実験から、還元力の添加によってccdaの生育阻害が軽減することを示し、チラコイド内腔でのレドックス制御の重要性を明らかにすることが出来た。さらに単離チラコイドを用いたin vitro の系でCcdAがTrx f1とTrx m1によって還元される条件を決定することが出来た。他の8種類のTrxアイソフォームについても既に精製タンパク質は準備できている。本年度に得られた結果をもとに、次年度では、添加するTrxの濃度などの様々な実験条件をふることによって、どのチオレドキシンンが効率的なCcdAへの電子供与体であるかを調べることが出来る。
また最近、HCF164と同様にチラコイド内腔にチオレドキシンドメインを持つタンパク質としてSOQ1が同定された。SOQ1は植物のストレス防御機構である熱散逸に関与することが示唆されているがタンパク質の詳細な機能はわかっていない。しかし、SOQ1はCcdAとHCF164から還元力を受けていると考えられており、チラコイド内腔でのレドックス制御の研究において重要なタンパク質である。単離チラコイドを用いたin vitro の系でSOQ1の還元を見ることによってCcdAからSOQ1への電子の伝達を調べることが出来る。還元力の伝達実験に必要なSOQ1の抗体を本年度に作製し、特異的にSOQ1と反応する抗体を得ることが出来た。またsoq1変異株を単離し、作製した抗体を使ってSOQ1タンパク質の蓄積を欠くことを確認した。またCcdAとHCF164のもう一つの標的タンパク質と考えられているPSINの抗体とシロイヌナズナの変異株についても取得済みである。当初の予定に加えて、新たな標的タンパク質の解析も加わり研究計画はおおむね順調に進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

引き続き、葉緑体チラコイド内腔におけるレドックス制御機構の解明を目指して研究をおこなう。本年度、単離チラコイドを用いたin vitro の系でCcdAがTrxによって還元される条件を明らかにすることが出来たので、今後は葉緑体に局在する10種類のTrxのどのアイソフォームによって効率的にCcdAが還元されるかを明らかにする。この結果からCcdAの特異的な電子供与体が明らかになると考えている。またCcdAの下流であるHCF164、PSINへの電子の流れも明らかにする。CcdAと同様にHCF164、PSINがどのTrxによって還元されるかを決定する。同様に、本年度に抗体を作製したSOQ1の酸化還元状態も調べる。さらに本年度取得したsoq1変異株のバックグラウンドでCcdAやHCF164の酸化還元状態を調べることによってCcdAからHCF164への電子の流れを明らかにすることが出来ると考えている。
精製タンパク質を用いたin vitroの実験と並行して、植物体を用いてin vivo でもどのTrx アイソフォームによってCcdA が還元されるかを明らかにする。具体的にはTrx の欠損変異株を単離し、その変異体バックグラウンドでHCF164 や CcdA が還元されないことを示す。既にTrx m3 とTrx z を除く変異株については取得済みである。またTrxの欠損変異株だけではなく、Trxの過剰発現株を作出し、Trxの過剰発現がHCF164やCcdAの還元状態に与える影響を調べる。特異的な電子供与体であるTrxを過剰発現させれば、HCF164やCcdAの還元レベルは高くなると考えられる。さらにTrxの欠損変異株がHCF164 や CcdA の変異株と同様の表現型を示すことを光合成パラメーターの測定および、光合成関連タンパク質の蓄積を調べることによって評価する。

次年度使用額が生じた理由

購入予定だった備品を安価な機種に変更したため。
また、英文校閲費として申請していたが使わなかったため。

次年度使用額の使用計画

物品費…備品、消耗品の購入。
旅費…国際学会への参加。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Expression of spinach ferredoxin-thioredoxin reductase using tandem T7 promoters and application of the purified protein for in vitro light-dependent thioredoxin-reduction system2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki Okegawa and Ken Motohashi
    • 雑誌名

      Protein Expression and Purification

      巻: 121 ページ: 46-51

    • DOI

      10.1016/j.pep.2016.01.005.

    • 査読あり
  • [学会発表] シロイヌナズナにおける葉緑体チオレドキシンの過剰発現株の解析2017

    • 著者名/発表者名
      桶川友季,本橋健
    • 学会等名
      第58回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      鹿児島大学、鹿児島市
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-18
  • [学会発表] Thioredoxin-dependent redox regulatory system in chloroplasts.2016

    • 著者名/発表者名
      Ken Motohashi and Yuki Okegawa
    • 学会等名
      The 17th International Congress on Photosynthesis Research; Photosynthesis in a Changing World
    • 発表場所
      MECC, MAASTRICHT, THE NETHERLANDS
    • 年月日
      2016-08-07 – 2016-08-12
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Arabidopsis m-type thioredoxin regulates the Calvin cycle enzymes in vivo.2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki Okegawa, Ken Motohashi
    • 学会等名
      The 17th International Congress on Photosynthesis Research; Photosynthesis in a Changing World
    • 発表場所
      MECC, MAASTRICHT, THE NETHERLANDS
    • 年月日
      2016-08-07 – 2016-08-12
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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