研究課題
本研究では，実験データと数値シミュレーションを融合する計算技法を開発し，細胞状態変化を記述する時系列データに当てはめることを目的とし，実際にバイオイメージングで得られる細胞追跡が不完全なデータに対して組織全体の変形動力学をデータ同化技法に基づいて解析する方法について研究を行った．この目的のために平成２８年度では，解析に適した生命現象の蛍光イメージング観察を行った．まず現象の観察においては，小型魚類の初期胚において観察される波動性の収縮運動に注目し，２光子励起デジタル走査型光シート顕微鏡を利用し蛍光ライブイメージングによる４次元画像の取得を行った．観察には，発生期において細胞の核が蛍光を発する系統を用いた．これによって発生期におこるリズムを持った細胞運動を４次元的に胚全体にわたって捉えることができ，数理解析を行うのに十分な画像データの取得ができた．その後，この４次元画像データに対して，１細胞トラッキング解析を行い，細胞運動軌跡データの取得を行った．一方で，胚における波動運動の記述に対応するため波動方程式系を用いて数理モデルを構築した．平成２９年度には，細胞追跡データに特化した解析手法としてアジョイント法の開発を進めた．まず，アジョイント法の定式化に必要な評価関数の設定とアジョイント方程式の導出を行った．次に，数理モデルの数値シミュレーションにより生成した人工データを用いて有効性検証試験を行った．その結果，評価関数の重みづけに推定結果が大きく依存することが判明した．実際のイメージングデータに適応するには，重みづけ，ずれ補正，誤差の見積もりなど微細なパラメータの調整が必要であることが分かった．今後，アルゴリズムの改善を行い，細胞追跡データに応用することで発生期の組織変形動力学の推定を行う．
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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