研究課題
平成29年度は、前年度に求愛行動制御に関わる視覚刺激への応答が記録された、optic tubercleに分枝を持つ介在神経細胞群の同定と機能解析を行った。最近ストックセンターから入手可能になったドライバー系統を用いてoptic tubercleに分枝を持つ神経細胞群を光遺伝学的に強制活性化し、生じる行動を解析した。その結果、求愛行動を構成する歩行運動を惹起可能な2つの異なる神経細胞群を見出した。これらの神経細胞群の一方はoptic tubercleに終末する視覚系投射ニューロンで、もう一方はoptic tubercleに密な分枝を持つ介在神経細胞群であった。GRASP法により、両者がシナプス結合を有する可能性を検討した結果、optic tubercleでGRASPシグナルが検出された。また、抗FRU抗体を用いた免疫染色により、これらの神経細胞群はいずれもFRUタンパク質を発現することが確認された。次に、上記の視覚系投射ニューロン群特異的なsplit GAL4系統をCa2+センサーの発現に用いて機能イメージングを行った。その結果、水平方向に移動する明暗格子パターンの呈示下で明瞭なCa2+応答が記録された。optic tubercleからのCa2+応答と歩行活動の同時記録下で同様の視覚刺激を反復呈示し、行動とCa2+応答の記録を照合したところ、雄が刺激の移動に追従する歩行ターンを示した際にCa2+応答が増大することがわかった。以上から、optic tubercleに分枝を持つこれら2つのfru発現介在ニューロン群が、視覚誘導性の求愛定位行動の制御に関わる神経経路の一部を構成することが強く示唆された。
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Journal of Neuroscience
巻: 37 ページ: 11662-11674
10.1523/JNEUROSCI.1943-17.2017