研究課題/領域番号 |
16K18584
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
久冨 理 山梨大学, 総合研究部, 助教 (60773728)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 走光性 / クラミドモナス / 鞭毛 / ダイニン / 青色光受容 |
研究実績の概要 |
単細胞緑藻クラミドモナスは青色光に対して走光性を示すが、その分子機構は未だ不明な点が多い。代表者らは、海産脊索動物カタユウレイボヤの精子鞭毛より、青色光を受容するドメインを持つ新規のタンパク質「DYBLUP」を同定した。クラミドモナスにおいてDYBLUPのホモログが存在することから、クラミドモナス走光性の分子機構にDYBLUPが関与する可能性がある。本研究では、DYBLUPの分子特性や機能解析により、クラミドモナス走光性の分子機構におけるDYBLUPの役割の解明を目指すことを目標としている。 平成28年度では、クラミドモナス変異株ライブラリよりDYBLUP欠損株を入手し、これを用いて走光性および光驚動反応における鞭毛運動変化について、野生株との比較解析を行った。走光性実験においては、野生株の場合、青色光の光源に向かって遊泳し、時間が経つにつれて光源とは反対側に遊泳した。これはクラミドモナスが青色光に対して徐々に順応すると考えられる。これに対してDYBLUP欠損株の場合、野生株で見られた方向転換をほとんど示さなかった。また、クラミドモナスに強光を照射させて光驚動反応を誘導させる実験を行ったところ、野生株の場合、2本の鞭毛運動が同調して後退遊泳を示したが、DYBLUP欠損株では、2本の鞭毛の同調が乱れていた。 以上の結果から、DYBLUPはクラミドモナス走光性および光驚動反応における分子機構に関与する可能性が示された。走光性および光驚動反応実験は、先端バイオイメージング支援プラットフォーム(支援機関:筑波大学下田臨海実験センター・稲葉一男研究室)より支援を受けて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたクラミドモナスのDYBLUPが結合する鞭毛タンパク質の同定については、未だ完了していないものの、本研究の目標であるクラミドモナス走光性の分子機構にDYBLUPが関与する可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度に行った走光性、光驚動反応実験に関して再現性を確認するとともに、クラミドモナスのDYBLUPと結合する鞭毛タンパク質の同定を行う。具体的にはDYBLUP変異株のレスキュー株を用いる(大阪大・山本遼介博士の協力のもと、作製済み)。このレスキュー株にはHAタグ、ビオチン化ペプチドタグが付加されている。そこで、抗HAタグ抗体を用いた免疫沈降法により、DYBLUPとともに共沈降したタンパク質を質量分析などで同定する。同時に、ストレプトアビジンラベルされた金粒子を用いた免疫電子顕微鏡解析により、クラミドモナス鞭毛軸糸内のDYBLUPの局在を決定する。 以上の研究成果をまとめ、学会発表、論文投稿準備を行う。
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