研究課題/領域番号 |
16K18585
|
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
戸張 靖子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (90453919)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ノルアドレナリン / 中脳発声中枢 / アドレナリン受容体 / 求愛発声 / 青斑核 / ウズラ / 地鳴き / 一目惚れ |
研究実績の概要 |
求愛発声に対するノルアドレナリンの影響を解析するために、ウズラにノルアドレナリンの脳室投与を行いその後1時間、自由行動下で求愛発声を観察・録音した。まず初めに、ウズラの脳室投与系を研究室で確立した。本研究費によって購入できた脳定位装置を用いてウズラの第三脳室にガイドカニューレの先端が設置されるように頭蓋骨にガイドカニューレを固定した。そのガイドカニューレに沿って、薬液投与用のカニュ―レを挿入し、脳室へ薬剤を投与した。。本手術が成功したかどうかは、アンジオテンシンIIの脳室投与により、数分以内に飲水行動が惹起されるかで判断した。雄ウズラを長日条件下で飼育し、繁殖期状態にすることで雄ウズラの求愛発声の頻度を高くした。それらのウズラに対し、ノルアドレナリンの脳室投与実験を行った。(1)1日目と2日目の同時刻に生理食塩水を脳室投与する群(対照群)と(2)1日目は生理食塩水、2日目の同時刻にノルアドレナリンを脳室投与する群(実験群)に分けた。対照群では1日目と2日目で求愛発声頻度が変わらないのに対して、実験群ではノルアドレナリンを投与した2日目に求愛発声頻度が減少した。ノルアドレナリン投与後の1時間の中で、ある一定時間求愛発声をしなくなる個体もいれば、1時間の間全く発声しなくなる個体もあらわれた。本実験により、ノルアドレナリン脳室投与により求愛発声の頻度が減少することが示された。前年度の実験結果と併せて、青斑核のノルアドレナリン産生細胞が中脳発声中枢に神経投射し、そこでノルアドレナリンが分泌され、ノルアドレナリンが中脳発声中枢に発現するノルアドレナリン受容体(アドレナリン受容体alpha2Aタイプ)に作用して、ウズラの求愛発声を抑制するという仮説をより強く支持されたと考える。求愛発声の頻度だけではなく、ノルアドレナリンが求愛発声の音響特性に変化を与えたどうかを現在解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雄ウズラが社会環境の変化を認知して、生殖やストレスにを制御する脳内の遺伝子発現を変化させるのに青斑核由来のノルアドレナリンシステムが関わることを明らかにした論文 (Tobari et al, 2017a)、および、雄鳥に関して異性の存在により個体の行動や生理状態が変化することまとめた総説論文(Tobari et al., 2017b)を、海外の査読付き学術雑誌に掲載することができた。以上の業績にもとづき、おおむね順調に進呈していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の夏に待望の鶏舎が完成した。これはウズラの飼育と行動解析ができるようになったことを意味する。本年度、雄ウズラの脳にノルアドレナリンを投与して、求愛発声への影響がみられたことか、今後はノルアドレナリンの濃度をふったり、ノルアドレナリン受容体のアゴニスト、アンタゴニストを投与することにより生じる求愛発声の変化を解析して、より詳細なデータをえる。これらのデータを加えて、ウズラの求愛発声とノルアドレナリンに関する論文を出版する。
|