本研究では、互いに近縁でありながら異なる性決定システム(XY型およびZW型)をもつメダカ属3種[ハウザンメダカ(XY型)、ハブスメダカ(ZW型)、ジャワメダカ(ZW型)]について、各種の性決定遺伝子を同定し、これら3種とその外群にあたるインドメダカ(XY型;性決定遺伝子:Sox3Y)を含めた4種で性決定機構を比較し、その進化メカニズムを解明することを目的とした。 今年度の実績を以下に要約する。XY型のハウザンメダカについては、常染色体上のDmrt1がY染色体に重複転座していること(Dmrt1Y)が判明した。そこでゲノム編集によって本遺伝子に機能欠失変異を導入したところ、Y染色体に変異をもつXY個体がメスに性転換した。このことから、本種のオス分化にY染色体上のDmrt1Yが必要であることが明らかになった。また、ZW型のハブスメダカとジャワメダカについては、性染色体上に存在する複数の性決定遺伝子候補について、ノックアウト個体の作出を行った。しかし、いずれの候補遺伝子も性転換を誘導せず、両種が未知の性決定遺伝子をもつと考えられた。そこでZ染色体あるいはW染色体の一方のみをもつ半数体を作出し、現在これらの半数体について全ゲノム解析を進めている。これにより、性染色体特異的な性決定遺伝子候補を探索する予定である。 また、メダカやルソンメダカにおいて共通してオス分化に関わるGsdf遺伝子について、XY型のインドメダカとZW型のハブスメダカにおいて機能解析を行った。その結果、前者のGsdfノックアウト個体では性転換が生じ、後者では性転換を生じなかった。このことから、XY型とZW型では性決定遺伝子の作用点が異なる可能性が予想された。
|