研究課題/領域番号 |
16K18591
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 良信 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 助教 (70626803)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シロアリ / 社会性 / ゲノム / 分業 |
研究実績の概要 |
社会性は、細菌からヒトまで様々な分類群の生物でみられ、生物進化について理解を深めるために探究すべき重要な現象である。本研究では、特に複雑で巨大な社会を構築するシロアリにおいて、社会性に関わる遺伝子である不妊化遺伝子の同定を目指す。そして、その進化過程を解明することで、昆虫における社会性の進化機構を解明に向けた研究基盤の構築を目的とする。そのために本研究では、次世代DNAシークエンサーを用いた不妊虫と繁殖虫のゲノム解析により、ヤマトシロアリの不妊化遺伝子の同定を試みた。その結果、不妊化遺伝子と連鎖するゲノム領域の特定をすることができた。さらに、カースト特異的にPCR増幅をすることができるプライマーを開発することができた。これらの成果により、不妊化遺伝子の候補が絞り込まれた。さらにどの遺伝子が不妊化遺伝子かを明らかにするためには、すべての候補遺伝子について機能解析によって実際に不妊化に関与するかを調べる必要がある。本研究で候補遺伝子を絞り込めたことは機能解析による不妊化遺伝子の特定に向けて大きな進歩となった。 ヤマトシロアリの不妊化遺伝子は性決定因子との強い相互作用があることが示唆されているため、その機能解析をする際にはシロアリにおける性決定因子との相互作用を調べる必要がある。本研究ではゲノム・トランスクリプトーム解析によって、性特異的に発現する遺伝子を同定することができた。性が決定される発生段階においてこの遺伝子のノックダウンすることで実際に性が変わるかを今後明らかにし、さらに不妊化遺伝子と相互作用があるかを解明していく。 以上の成果によって、シロアリの社会性を実現する上できわめて重要な因子である不妊化遺伝子の特定に大きく近づいた。今後はさらにゲノム解析等を進めることによって、不妊化遺伝子を特定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、シロアリを実験室内で交配させてそれによって生まれた仔虫を実験に用いるが、生まれた仔虫の数がいまだ十分でないばかりか、仔虫の成長が遅れており、実験が停滞した。また、今年度は所属機関が変わり、新たな研究場所への移動に伴い、一部の実験を最初の手順からやり直さなければならなかったことも計画の遅延の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
計画の進行がやや遅れているが、補助事業期間の延長が承認されたため、来年度も本研究を行なうことで研究計画の変更せずに研究を完遂する。今後は使用する研究材料(シロアリ)を計画よりも多く準備して、研究材料をより効率的に確保して遅れに対策する。そのためシロアリの採集と飼育を予定よりも多く行う。計画中の遺伝子解析についてはシロアリの飼育と同時並行して行うことが可能であり、シロアリの飼育を予定よりも多くしても遺伝子解析の進行には問題ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究材料であるシロアリの生育の遅れにより、実験計画に遅れが生じ、計画していた実験を行うことができなかったので、その実験にかかる費用を本年度は使用しなかった。次年度は、本年度に計画していた実験を行うことで、今回生じた次年度使用額を消化する。計画の遅れはあるももの、補助事業期間の延長が承認されたため、次年度も研究を継続することで当初の計画通りの研究を行う。
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