研究課題/領域番号 |
16K18592
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 順子 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD) (60743127)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セロトニン / セロトニン受容体 |
研究実績の概要 |
前端部神経外胚葉で合成されるセロトニンが、胃腸の形成や機能にどのように関与しているのか、引き続き解析を行ってきた。昨年度の研究により、セロトニン合成酵素やセロトニン受容体5HT7ノックダウン胚において胃腸の形成不全がみられるものの、胃腸に発現する因子や、餌の取り込みには一見すると影響がないようにみられた。しかし本年度、セロトニンの投与やセロトニン受容体阻害剤(Asenapime maleate、SB269970 hydrochloride、Methysergide maleate salt)を用いた解析により、セロトニンが幽門及び肛門活躍筋の弛緩・収縮に影響していることが確認された。興味深いことに、セロトニンの投与により幽門括約筋の弛緩が誘導され、逆に肛門括約筋は収縮傾向を示した。一方、セロトニン受容体阻害剤の投与は、幽門括約筋の弛緩が阻害され、逆に肛門括約筋では弛緩が誘導された。つまり幽門括約筋と肛門括約筋はそれぞれセロトニンに対して逆の反応を示していることが示唆された。 また、セロトニン受容体の検出を進めていく中で、胃腸にいくつか神経細胞が存在することがSynaptotagminBの検出により明らかとなった。セロトニン受容体5HT7、 5HT1A、5HT2Aのいずれも発現量が非常に少ないことから、今のところ胃腸における発現パターンの検出には成功していないが、神経細胞に受容体が発現している可能性は十分考えられた。今後も検出方法を検討しながらそれらの受容体の発現パターンを探る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はセロトニン受容体5HT7阻害胚におけるRNA-seqを用いた遺伝子発現比較を行う予定であったが、以下の理由からその実施を見送った。まず、5HT7の胃腸における発現パターンが確認できておらず、その検出に重点を置く必要があると考えた。また、当初は、5HT7阻害胚が胃腸の発現因子に影響することで不完全な胃腸を保持していると考えていたが、これまでのところ代表的な因子の発現には影響がみられておらず、セロトニンは遺伝子発現調節とは異なる点で、胃腸の形成や機能に影響している可能性が十分考えられた。 セロトニン受容体の発現パターンに関しては、検出方法を検討するなど様々な工夫を凝らしているが、今のところ胃腸組織での検出に成功していない。時期的に発現していることはすでに確認されいるが、その発現量は非常に少ないと予測され、今後も検出方法の検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、他のセロトニン受容体5HT2Aや5HT1Aの検出、及びそれらの阻害胚の表現型解析を行いながら、セロトニン受容システム影響下にある現象を探っていく予定でいる。その上で、セロトニン受容体阻害胚におけるRNA-seqの実施の必要性があるか検討する。セロトニンが胃腸の各種括約筋に及ぼす影響は非常に興味深く、胃腸形成不全との関連性を検証していく。これまでセロトニン合成阻害胚やセロトニン受容体阻害胚を用いて胃腸の形成に着目した研究を進めていたが、今後はその機能解析にも着目した研究を同時に進めることで、研究のさらなる発展へとつなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
子どもの看病等で実験を突如中断せざるを得ないことが度々生じ、実験の進行が計画より遅れた。2人の子どもを保育施設に預けている間が主な実験時間であることから、研究進行の遅れを期間内に取り戻すことが不可能であった。その遅れを取り戻すため、また、これ以上の遅れを生じさせないために、研究補助者の雇用を確保していくことを計画している。よって、次年度使用予定額にはその予定人件費を含めている。
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