研究実績の概要 |
昨年度、メダカ属5魚種のBACライブラリーを用いてHCE遺伝子のクラスター構造を明らかにしている。その結果、メダカ属の3つの系統のうち、ラティペスグループのみでHCE様遺伝子であるAHCEが見つかった。AHCEはまだ機能が明らかになっていない。そこで今年度は、AHCE遺伝子の機能解析を試みた。まず、RT-PCR法でミナミメダカのst.25, 28, 33, 39の胚におけるAHCE遺伝子の発現を孵化酵素HCEとLCE合わせて調べた。その結果、st.25から弱いながらも発現が検出でき、st.33で最も発現量が上昇し、その後発現量が減少していた。また、in situハイブリダイゼーション法で発現局在を調べた結果、孵化腺細胞に局在していることが分かった。これらの発現パターンはHCEやLCE遺伝子と一致していた。次に、AHCEの組換えタンパク質を大腸菌の系で作製し、0~0.75 M NaCl存在下における卵膜分解活性を調べた。コントロールとしてHCEの組換えタンパク質を作製し、活性を比較してみると、AHCEはHCEと比べて0.1倍以下の活性しかなく、卵膜分解活性はほとんどないことが分かった。 メダカだけでなく、ゼブラフィッシュなど他の魚種においても孵化酵素遺伝子が多重コピー遺伝子ととして存在し、そのうちの少なくとも1つが発現量が弱いものが見つかる。これらの発現量の低い遺伝子は卵膜分解以外の機能を持つ可能性がないだろうか?孵化酵素はプロ型酵素が生体内で合成され、分泌時にプロセッシングを受けて成熟酵素になるが、プロセッシング酵素はまだ明らかになっていない。そこで、プロセッシング酵素の可能性を検証するために、プロ型HCEの組換えタンパク質を作製し、AHCEで処理することによりHCEがプロセッシングされるのかを調べた。その結果、弱いながらもAHCE処理前に比べて処理後のプロ型HCEの活性が上昇した。
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