研究課題
前年度までの解析により、ヌタウナギの半規管は単一なものの、その発生過程ではヤツメウナギの二半規管と相同な遺伝子発現が耳胞の相同な位置において見られ、ヌタウナギは2次的に二半規管が退化して単一半規管になった可能性が示唆された。本年度はまず、全脊椎動物で唯一、前後に2つある、奇妙なヌタウナギの前庭神経節の発生に注目した。その結果、これら2つの神経節はどちらも、他の顎口類と同様に耳胞の後方から脱上皮化して形成されることが分かった。すなわち、一見奇妙な発生をするヌタウナギの半規管とその神経も、基本的にはヤツメウナギと発生プログラムによって形成されることが分かった。次に、ヤツメウナギの内耳の有毛細胞の分布とその神経支配を詳細に観察すると、円口類には存在しない水平半規管の膨大部と相同と思われる検出器と神経枝が確認でき、驚くべきことにこれはヌタウナギにも存在した。水平半規管の膨大部の発生に不可欠の遺伝子Foxg1もヤツメウナギにおいて発現していたことと合わせて考えると、円口類には水平半規管そのものはないものの、その検出器と神経の祖型と言えるものは存在しているようだ。では、水平半規管そのものはどうやって獲得されたのか?Otx1ノックアウトマウスは半規管を欠くことから、この遺伝子の発現獲得が水平半規管に必須だったことが予想されていた。ところが、われわれが4種のOtx遺伝子の発現をヤツメウナギで調べたところ、驚くべきことに4種とも発現が確認された。以上から、水平半規管の獲得にはOtx1に制御される下流遺伝子の働きの変化があったのではないかと推測することができた。以上を論文にまとめ投稿し、Nature誌に掲載された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Nature
巻: 565 ページ: 347~350
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0782-y
Nature Ecology & Evolution
巻: 2 ページ: 859~866
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0526-2