海藻・海草からなる藻場は,非常に多様な生物に利用されており,沿岸生態系の生物多様性を考える上で重要な環境である.本研究は,タナイス目甲殻類を対象に,底生動物である彼らがいかにして不安定な海藻葉上での固着生活を獲得するに至ったのかを明らかにすることを目的とした.研究期間中,固着生活に必須である糸分泌機構に特に注目し,分類学的,系統学的,形態学的研究,飼育実験を実施した.その結果,タナイス目で見つかっていなかった新規の糸分泌機構を発見したほか,数多くの日本未記録の糸分泌グループを発見し,タナイス目における糸分泌機構に関する進化史はこれまで考えられていたよりも複雑であったことを明らかにした.
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