研究課題
鯨類をはじめとする野性生物の個体群を適切に維持・管理するうえでは系群単位での管理が求められている。本研究で対象としているミンククジラ (Balaenoptera acutorostrata)はナガスクジラ科に属する鯨類で、太平洋、大西洋、南半球に広く分布している。主に遺伝学的研究により、太平洋産のミンククジラには二つの系群が存在し、特に日本沿岸域では両系群が混在していることが明らかになっている。一方で、遺伝学的情報以外、特に形態学的な系群間の違いは十分明らかにされていない。そこで本研究では、日本沿岸域におけるミンククジラの系群構造解明に貢献するため、系群間での形態学的な違いを明らかにすることを目的とした。2018年度は日本政府が実施した北西太平洋鯨類科学調査(NEWREP-NP)において、ミンククジラを対象として頭骨形態や外部形態(胸鰭・尾鰭などの体色)に関するデータ収集を行った。また、大西洋亜種のデータを収集するためノルウェーで操業をしている商業捕鯨船に乗船し調査をおこなった。系群間での形態比較の結果、頭骨形態にこれまで報告されていなかった系群間の違いが存在することが示され、学会発表において報告した。さらにその成果については現在論文化を進めている。またこれまで3年間の成果として主に系群間、亜種間の形態学的比較研究をすすめ、論文2本、学会発表1本を発表した。また現在系群間での頭骨形態の差異について論文化を進めているほか、外部形態の比較結果について学会発表を予定している。本研究プロジェクトを通じてこれまで情報が極めて乏しかった大西洋産亜種についての形態学的知見が充実した。これにより別亜種とされている太平洋産個体群とも個体差や雌雄差を考慮した比較をおこなうことができ、体色などの外部形態、そして骨格形態において明瞭な違いが存在していることを示すことができた。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Cetacean Research and Management
巻: - ページ: 印刷中
Cetacean Population Studies
巻: 1 ページ: 25-18