研究課題/領域番号 |
16K18601
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
浅原 正和 三重大学, 教養教育機構, 特任講師(教育担当) (20709399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臼歯 / Inhibitory cascade model / 食肉目 / クマ科 / 単孔類 / オブドゥロドン / カモノハシ / 三叉神経 |
研究実績の概要 |
下顎臼歯相対サイズの進化について、哺乳類食肉目を中心とした解析を終え、論文を出版した(Asahara et al. 2016 Proceedings of the Royal Society B)。本論文ではまず、哺乳類食肉目の下顎臼歯形態における食性適応(肉食適応、雑食適応、昆虫食適応)のパターンを明らかにし、哺乳類食肉目が特徴的なパターンで臼歯形態を変異させていることを明らかにした。また、遺伝子改変マウスの解析から、BMP7がこの形態変異に関連している可能性が提示された。加えて、各種食肉目の遺伝子配列における非同義置換/同義置換比の解析から、食肉目クマ科が祖先枝においてBMP7が正の選択圧を受けて進化していた可能性が提示された。これはクマ科に近縁な化石種を含めた比較形態学的解析の結果にも整合的であり、BMP7のような拡散性の分子が食肉目の臼歯形態の進化と食性適応に影響していることが考えられた。本論文により、博物館標本を用いた比較形態学的解析と、遺伝子改変マウスの表現型解析による形態進化にかかわる候補遺伝子の推定、分子進化の解析による候補遺伝子の特定といった、複数の手法を組み合わせることで、生物多様性の情報をベースとして発生学的・遺伝学的知見を得る研究方法を確立することができたといえる。また、CT画像データなどを用いて化石カモノハシ(オブドゥロドン)と現生のカモノハシを比較した。それにより、現生カモノハシが咀嚼を行うにも関わらず歯を失った原因について、電気感覚とそれを伝える神経の発達による歯の生えるスペースの減少にあるとする研究成果も得られ、論文を出版した(Asahara et al. 2016 Science Advances)。そのほか、食肉目イヌ科の下顎第四大臼歯の成因や、アカネズミ、ヒメネズミ、ニホンザルの臼歯形態の地理的変異に関してなど、関連論文を複数出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究で蓄積してきた画像データ等を有効活用することで、臼歯サイズの解析においては当初の想定以上のスピードで解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
陸生哺乳類のうち、食肉目を中心とした研究が一段落したため、今後はアザラシ類、鯨類を中心とした形態解析を進めていくとともに、遺伝子改変マウスの臼歯3D形態解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張費用、論文出版費用、英文校正費用などが計画よりも低額で済んだため、計画よりも使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
論文出版費用、英文校正費用が計画よりも高額となった場合に使用するほか、より確実な成果を得るために、共同研究のための出張日数を増やすことに利用することを計画している。
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