当該年度は研究代表者のもとに蓄積されている哺乳類の歯や頭骨の画像データ、3Dデータを利用したデータ解析を進めた。解析や標本作成においては不定期に補助員を雇用することで効率化を図った。論文発表として、本研究計画と関連して開発された臼歯のサイズ比から化石種の食性推定を行う手法を利用した成果の一部をAsahara and Takai (2019)で報告した。また、本研究計画は手法面と研究対象の面で新規な研究分野の構築をひとつの目標としていた。手法面では、生物多様性のデータセットを利用することで、生物進化の発生学的要因と適応的要因という、至近要因と究極要因双方を明らかにするというものである。生物多様性のデータとして、博物館標本として保管され、公開されている形態データと、ゲノムデータとして公開されつつある遺伝子情報がある。研究対象としては、進化の方向性とそれを拘束するメカニズムに注目してきた。本年度は学会内でこのような研究分野についてのシンポジウムを開き、研究分野の振興に努めた。また、昨年度学会で関連したミニシンポジムを開いた際の記録が本年度、浅原ほか(2018)として公刊された。また、アウトリーチ活動としての一般向け講演も行い、研究成果を社会や国民へと向けて発信することに努めた。なお、本研究計画に関連して最終年度前年度応募として申請した基盤研究Bの研究課題が採択されたため、本研究計画はそれに統合されるかたちで発展的解消となった。
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