近畿~東日本に広く分布するヒガシニホントカゲ(トカゲ科,爬虫綱)の地理的変異をDNAマーカーと外部形態に基づいて調べた.その結果,本種は鮮新世に中央高地の隆起によって近畿~中部と東日本の2系統に分岐し,東日本では前期更新世の後半に東北地方と関東甲信越の系統に分岐したあと,後氷期に後者が北方へ分布を拡大し,東北地方に複雑な遺伝的組成の集団が形成されたことが明らかとなった.各季節ごとの各地の標本に基づいて齢構成と生殖腺の発達状態を調べた結果,左記の遺伝的分化とは無関係に寒冷での繁殖期の遅れが認められた.一方,生態ニッチモデリングによる予備的な解析の結果,系統に応じた生息適地の違いが若干認められた.
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