研究課題/領域番号 |
16K18603
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
佐藤 博俊 龍谷大学, 科学技術共同研究センター, 博士研究員 (10635494)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 菌類 / 共生 / 隠蔽種 / 生物地理 / DNA |
研究実績の概要 |
本研究では、ブナ科・マツ科・フタバガキ科などの樹木と相利共生することで知られる外生菌根菌を対象としている。本研究では、外生菌根菌の一種であるオニイグチ属菌の隠蔽種を識別し、その上で、共生する樹木の地理的分布に着目しながら、個々の種のもつ地理的分布パターンを解明することを目的としている。本年度には、主にオニイグチ属菌の子実体サンプルの収拾と、効率的な隠蔽種の識別法の開発を行った。まず、国内外の共同研究者に依頼することで、幅広い地域からオニイグチ属菌の子実体のDNAサンプルを収拾した。また、隠蔽種については、2種類の異なるアプローチから二重で識別を行う方法の確立を目指している。一つ目のアプローチとしては、遺伝様式の異なるミトコンドリアDNA(片親遺伝)と核DNA(両親)の塩基配列を比較し、両者の配列から共通して識別されるユニットを探索する方法である。2つ目の方法としては、複数遺伝子の結合配列(スーパーマトリックス)に基づいて分子系統樹を構築し、合祖理論に基づいて種の境界を探索するという方法である。本年度には、これらの探索法を行う上で必要な対象遺伝子として、核のシングルコピー遺伝子24個とミトコンドリア遺伝子6個を選別した。さらに、これらの遺伝子領域を対象としてPCRを行うためのプライマーの設計を行った。今後、設計したPCRプライマーを用いてマルチプレックスPCRを行い、さらには、次世代シーケンサーを用いて、超並列的にこれらの遺伝子領域の解読を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オニイグチ属菌の子実体サンプルの収拾と効率的な隠蔽種の識別方法の開発が進んでいるため、概ね研究は順調に進んでいると考えている。オニイグチ属菌の塩基配列の解読まで進んでいることが理想ではあったが、サンプルの収拾と手法の開発にはどうしても時間を要するため、概ね想定の範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オニイグチ属菌の子実体サンプルを国内外のより広範囲から行っていきたいと考えている。サンプルが不足している地域については、特に重点的に収集を行う予定である。また、新たに開発した隠蔽種を効率的に識別する方法を順次、手持ちのサンプルに対して適用していく予定である。この解析については、結果が得られ次第、成果としてまとめたいと考えている。また、サンプルう数が十分に集まってくれば、オニイグチ属菌の地理的分布パターンの推定を行うモデリングを行っていきたいと考えている。共生樹種の分布に着目しながら、オニイグチ属菌の地理的分布パターンの推定モデリングを行うことによって、外生菌根菌の生物地理パターンの解明が進むと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNA実験試薬(PCR酵素および次世代シーケンス用のキット)をキャンペーン価格で購入することができ、また、当初の想定よりもDNA実験時での失敗が少なかったことから、 実験試薬の消費を当初の予定よりも抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初は予定していなかったが、本年度、チェコのプラハにおいて開催される国際会議(国際菌根会議)に参加し、関連分野の研究者と交流することで情報収集を行いたいと考えている。
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