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2016 年度 実施状況報告書

イチジク果実内の生物群の共進化

研究課題

研究課題/領域番号 16K18608
研究機関宮崎大学

研究代表者

田中 龍聖  宮崎大学, 医学部, 助教 (70723550)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード線虫 / 共進化 / イチジク / オオバイヌビワ
研究実績の概要

イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。
沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島、台湾島、からオオバイヌビワ果実を採集し、Caenorhabditis sp. 34(線虫)の有無を調べたところ、全ての島からC. sp. 34が検出された。さらにこのC. sp. 34の遺伝的変異について調べたところ、(沖縄本島、宮古島)と(石垣島、西表島、与那国島、台湾島)の二つに大きく分かれることが明らかとなった。また、同様に糸状菌の検出を試みたところ、全ての島からFusarium sp.が高い頻度で検出された。また、沖縄本島と石垣島のオオバイヌビワ果実中の細菌叢をメタゲノム解析で調べたところ、オオバイヌビワ果実内からは90科以上の細菌が検出された。このうち、DNA量においては、7科の細菌が大部分を占めており、沖縄本島と石垣島で共通であった。これらのことから、オオバイヌビワ果実内には、C. sp. 34(線虫)、糸状菌(Fusarium sp.)、7科の細菌、が共通で広く存在し、果実内の環境はどの場所においても非常に近いことが示唆された。また、イチジク果実内から検出された線虫においては、遺伝的に異なる2グループに分かれたことから、個体群が地理的に分離されていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、イチジク、イチジクコバチ、線虫、微生物の遺伝的多様性および生態的特性を調べるために、主に以下の3つのことを3カ年で行う計画である。1)各地から採集したイチジクと、そこから検出される生物について、ゲノムレベルの地域差異を基に、系統樹を作成し、種間で比較する。2)イチジク果実内の生物のうち、顕微観察で検出できない生物について、メタゲノム手法で全生物種および地域ごとの種構成を調べる。3)生物間相互作用のキーとなる、「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」について、質量分析により同定し、相同性検索、添加試験によりイチジク、イチジクコバチ、線虫での「化学物質」の働きを調べる。
この計画の中で、本年度(1年目)は、先島諸島(宮古島、石垣島、西表島、与那国島)、沖縄本島および台湾から線虫C. sp. 34を採集することができ、それぞれ株を作成し、複数遺伝子座による系統解析まで行った。また、イチジク果実内の微生物においては、培養により糸状菌(Fusarium sp.)、メタゲノム的手法により細菌の検出を行った。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、C. sp. 34のゲノムを調べ、近縁種の線虫と比較し、数は少ないものの多数の化学物質受容体の存在を確認した。
これらのことから、本研究は概ね当初の計画通り進行していると考えている。

今後の研究の推進方策

本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。
今後は、1年目に先島諸島および沖縄本土、台湾から得られた線虫株を使い、SNPs解析を行い、より詳しい遺伝的変異を明らかにし、種内系統樹を作成する。また、線虫C. sp. 34のゲノムを調べたところ多数のレトロトランスポゾンが見られた。レトロトランスポゾンは、ゲノムの中で変異を起こすため、これが線虫の多様性にどのように影響するか調べる。また、イチジク、イチジクコバチ、糸状菌でも同様に種内変異を調べ系統樹を作成する。これらの系統樹を比較して、共進化が起こっているか確認する。また、イチジクの果実内の細菌がどこから来たのか確認する。具体的には、イチジクコバチからもメタゲノム的手法により、付随している細菌叢を調べ、イチジクコバチが入ったイチジクと入っていないイチジクの細菌叢も比較する。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、線虫種の耐久型誘導物質であるアスカロサイドのイチジク果実からの分離を試みる。まずは、アスカロサイドの素抽出画分において、線虫の行動や生理の変化を確認する。その後、線虫の反応性からアスカロサイドの種類を絞っていき、最終的にはアスカロサイドと線虫側のレセプターの対応を明らかにする。またこれらのアスカロサイドがどの生物由来であるか明らかにし、系統樹の情報と組み合わせることで、イチジク果実内の生物の共進化を論じる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] カリフォルニア工科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      カリフォルニア工科大学
  • [国際共同研究] Academia Sinica(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Academia Sinica
  • [学会発表] イチジク果実内部に生息する線虫Caenorhabdits sp. 34の餌としての細菌2016

    • 著者名/発表者名
      田中龍聖・神崎菜摘・菊地泰生
    • 学会等名
      第24回 日本線虫学会大会
    • 発表場所
      東京、日本
    • 年月日
      2016-09-14 – 2016-09-16
  • [学会発表] Ecology of Caenorhabditis sp. 342016

    • 著者名/発表者名
      Ryusei Tanaka and Taisei Kikuchi
    • 学会等名
      32th European Society of Nematologists
    • 発表場所
      ブラガ、ポルトガル
    • 年月日
      2016-08-28 – 2016-09-01
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-22  

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