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2017 年度 実施状況報告書

イチジク果実内の生物群の共進化

研究課題

研究課題/領域番号 16K18608
研究機関宮崎大学

研究代表者

田中 龍聖  宮崎大学, 医学部, 助教 (70723550)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード線虫 / 共進化 / イチジク / オオバイヌビワ
研究実績の概要

イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。本研究は 、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。
本研究および共同研究において、オオバイヌビワ内に生息する線虫Caenorhabditis sp. 34の全ゲノムが解読された(論文投稿中)。これにより、各地から採集されたCaenorhabditis sp. 34の詳細な多様性解析が可能となった。現在各地から採集した線虫の株を作成し、多様性解析用のDNAを抽出している。また、オオバイヌビワおよび内部の糸状菌とイチジクコバチも同時に採集しており、順次解析予定である。また、オオバイヌビワ果実内において、線虫および細菌叢の経時的変化についてメタゲノム的手法で調べた結果、線虫はオオバイヌビワ雄果実のイチジクコバチ脱出前の時期に最も個体数が多くなり、細菌叢はオオバイヌビワ果実のステージにより変化することが明らかとなった。
今後は、採集したオオバイヌビワ、イチジクコバチ、線虫、糸状菌の遺伝的多様性を明らかにし、比較解析を行う。またオオバイヌビワ内の細菌叢の変化が線虫にどのように作用するか実験室内で培養実験を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、イチジク、イチジクコバチ、線虫、微生物の遺伝的多様性および生態的特性を調べるために、主に以下の3つのことを3カ年で行う計画である。
1)各地から採集したイチジクと、そこから検出される生物について、ゲノムレベルの地域差異を基に、系統樹を作成し、種間で比較する。2)イチジク果実内の生物のうち、顕微観察で検出できない生物について、メタゲノム手法で全生物種および地域ごとの種構成を調べる。3)生物間相互作用のキーとなる、「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」について、質量分析により同定し、相同性検索、添加試験によりイチジク、イチジクコバチ、線虫での「化学物質」の働きを調べる。
この計画の中で、本年度(2年目)は、先島諸島(宮古島、石垣島、西表島、与那国島)、沖縄本島および台湾から得た線虫の株を確立することができ、複数株のゲノムを読んだ。しかし、いくつかの株についてはまだゲノムが読まれておらず、全株を使ったSNPs解析のために今後早急に読む必要がある。また、イチジク果実内の微生物においては、メタゲノム的手法により細菌叢が果実のステージにより変化していくことを明らかにした。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、イチジク雄果実において特定の時期に線虫の便乗ステージが大量に現れることを明らかにし、この時期に果実内に線虫の便乗ステージを誘導する化学物質が存在することが示唆された。
これらのことから、線虫のSNPs解析に若干の遅れが見られるものの、本研究は概ね当初の計画通り進行していると考えている。

今後の研究の推進方策

本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。
最終年度は、先島諸島および沖縄本島、台湾から得られた線虫株を使い、SNPs解析を行い、より詳しい遺伝的変異を明らかにし、種内系統樹を作成する。また、イチジク、イチジクコバチ、糸状菌でも同様に種内変異を調べ系統樹を作成する。これらの系統樹を比較して、共進化が起こっているか確認する。また、イチジクの果実内の細菌が線虫にどのように影響するか、実験室内で培養実験を行い、線虫と細菌の相互作用を明らかにする。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、イチジク雄果実およびイチジクコバチから抽出した物質を線虫に添加し便乗ステージ誘導を確認するとともに、ガスクロマトグラフィーによる便乗ステージ誘導物質の同定を行う。イチジク果実からの分離を試みる。最終的に、「化学物質」、「細菌叢」、「各生物の系統樹」の情報を組み合わせることで、イチジク果実内の生物の共進化を論じる。

次年度使用額が生じた理由

本年度に予定していた線虫のSNPs解析を次年度に実施することとなったため次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] カリフォルニア工科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      カリフォルニア工科大学
  • [国際共同研究] Academia Sinica(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Academia Sinica
  • [学会発表] イチジク果実内部に生息する線虫Caenorhabdits sp. 34の生態特性2017

    • 著者名/発表者名
      田中龍聖, Afrin tanzila, 菊地泰生
    • 学会等名
      第25回 日本線虫学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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